教えて!けいゆう先生

医師が考える最も確実ながん治療
標準治療を選ぶべき理由

 突然ですが、最初にたとえ話をします。あなたが、病院で受けた検査で大腸がんと診断されたとします。しかも、かなり進行していて、肝臓や肺にも転移している。病院の医師にはこう告げられます。

 「ステージ4の大腸がんです。治療法は化学療法(抗がん剤治療)です。標準治療であるAという抗がん剤をお薦めします。あなたと同じ状況なら皆さんがAを選ばれます」

 しかしあなたは、突然のことで即答できません。そこで帰宅して、慌ててインターネットで検索してみます。何か、もっと良い治療はないのか? がんが消えてしまうような、そんな方法はないのか? するとあなたは、がんを専門に取り扱っているクリニックのホームページを見つけます。

 大腸がんのモニター10人、全員がんが消えたという、Bという名前のサプリメントが紹介されています。10人全員、大腸がんが治ってしまったというのです。これは効果があるかもしれない。しかしいろいろ調べると、他にも同じような治療がたくさんあるのに気づきます。「100人やって全員がんが小さくなった、最先端の免疫療法C」というのも見つけ、魅力的に感じます。どれを信用すればいいのでしょうか?

 そこで、昔からかかりつけだった近くの医院のベテランの先生に相談しに行きます。すると彼はこう言います。

 「私は、標準治療Aは副作用が強いので大反対だ。昔私が使っていたDという抗がん剤がいい。これまでこの町で1000人以上の大腸がん患者を見てきた私が言うのだから間違いない」

 この大先生が言うのなら、確かに正しいかもしれない。病院に行って、Dという抗がん剤が使えるか聞きに行こうか? 翌日あなたは職場の先輩に相談してみます。すると先輩は表情を曇らせ、あなたにこう言います。

 「僕の母親も大腸がんで標準治療のAという薬を使っていたけど、効き目があまりなくて、去年亡くなったよ。Aはやめといた方がいいと思うよ」

 あなたは思います。やっぱりAは効かないんだ。病院にだまされなくて良かった。そんな時、何気なく見ていた新聞にこんな本の広告を見つけます。

 「がんは放置せよ。抗がん剤治療を受けてはいけない」

 あなたはようやく安心します。放置してもいいのだと。あなたはもう病院に行くのもやめます。特に症状もないのですから、何もつらいことはない。普段通りの生活を送ることに決めます。さて、あなたはどうなるでしょうか。

 過去のデータから、ステージ4の大腸がんの生存期間中央値は、抗がん剤治療(化学療法)を行わないケースでは約8カ月とされています。もちろん個人差はありますが、大腸がんが肺と肝臓に多発転移を起こしていて、全く何も治療しない場合、1年、2年と長く生きられる可能性は低いでしょう。放置すれば、非常に高い確率で、近いうちに大腸がんで亡くなるということです。では、長く生きられる確率が最も高い治療法は何だったのでしょうか?


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