医学部トップインタビュー

日本のリーダーとなる人材を育成
課題を見つけ、解決する力を養う-筑波大医学群医学類

 筑波大学は東京教育大学を前身として100年以上の歴史を持つが、医学部にあたる医学専門学群が設立されたのは1973年で、全国の大学医学部の中では比較的新しい。これまでに専門医、医学教育者、医学研究者、保健・医療・福祉行政者など幅広い分野で国内外で活躍する人材を輩出してきた。基礎医学研究の第一人者でもある桝正幸医学群長は「自分のやりたいことを見つけてさまざまな分野で活躍できるよう教育しています。知識を増やすことも重要ですが、むしろ、今、何が問題なのかを考えて自分で解決する力を身に付けてほしい」と学生への期待を語る。

インタビューに応える桝正幸医学群長

インタビューに応える桝正幸医学群長

 ◇グローバル化で他大学をリード

 2023年以降は世界標準の教育レベルを公的に認証された医学部の卒業生でなければ米国で医療に従事できない―。米国の外国人医師卒後教育委員会が10年に出した通告を受け、日本医学教育評価機構(JACME)が大学医学部の医学教育の質が国際基準に達していることを保証する医学教育分野別評価を行うことになった。日本の大学医学部はこの国際認証を受けるために、カリキュラムの大幅な変更を余儀なくされている。そんな中、開設当初からグローバル化も視野に入れ、独自のカリキュラムを構築してきた筑波大学は、他大学をリードする存在となっている。

 「3年前に国際認証を受けたとき、他の大学がやろうとしていることを40年も前から先取りしていると評価されました。ゼロからカリキュラムを作ったので、非常に先進的な独自のカリキュラムになっていると思います」

 通常、医学部教育は学問を中心とした縦割りで構成されているが、同医学類では、臓器別・症候別のカリキュラムをベースに基礎・臨床・社会医学の分野が統合されている。

 「例えば循環器コースが始まると、循環器系の解剖学、生理学、病理学、薬理学の基礎系からスタートして、個々の疾患に入っていきます。内科、外科という分け方ではなく、人間を全体で診て、検査から診断、治療までを一連の流れの中で教育していく方針です」

 ◇自ら学んでいく環境

 04年からは新・筑波方式と呼ばれる新しいカリキュラムを導入し、さらに充実した内容に進化した。

 まず、講義形式の授業は最小限に抑え、少人数グループでディスカッションをしながら能動的に学ぶテュートリアル教育を全科目に導入した。一部に導入する大学は増えているが、全面的な導入は珍しい。

 「例えば、臨床系の科目では、具体的に患者さんが登場するシナリオを使って、症状から何が問題かを考えて7~8人のグループで話し合いながら解決していく。実際、病院に行くと、そういう場面が多いわけで、講義では伝えられないことだと思います」

 病院実習も国際認証に必要な時間を上回る期間を確保して、単なる見学ではなく、指導医のもとで学生が1人の患者を受け持ち、診察から検査、手術にも立ち会う診療参加型の実習を行っている。

 6年間を通じて学ぶ医療概論では、医療人に必要な内容を学年ごとにテーマを設定する。

 「3年次の地域ヘルスケアプロモーションでは、小学校に行ってたばこがいかに体に悪いかを教えるなど学生が自分たちで計画して行います。5年次の地域医療実習では、過疎地域の病院に行きますが、地域住民の生活を体験するために学生が農作業に参加させていただくこともあります」

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