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日本のリーダーとなる人材を育成
課題を見つけ、解決する力を養う-筑波大医学群医学類

 ◇研修病院に大学教員が常駐

 臨床研修では、研修プログラムや研修状況を評価する卒後臨床研修評価機構(JCEP)から国立大学病院では全国初となる臨床研修評価の認定を2008年に受けた。

 「総合臨床教育センターが大学病院と地域の中核病院、街中の一般病院の中から複数の病院を選択してオリジナルの研修プログラムを作り、ジェネラリスト、スペシャリスト、どんな希望にも対応できるようにしています」

 さらに県内の主な中核病院に地域医療教育センターを配置し、そこに大学病院の教員が常勤して、研修医の指導にあたる。

 「大学で実際に指導している先生方は、学生への接し方にも慣れていますから、外の病院に任せきりではなく大学で求められるレベルの実習ができると思います」

 充実したプログラムや指導体制が功を奏し、研修医のマッチング率は全国でも常に上位に位置している。

 女性医師支援では、時短労働、時間外当直免除はもとより、大学病院内に小規模保育室を設置し、病児・病後児保育を行うほか、ベビーシッター代を病院が半額補助するなどの対応を取っている。

 「女性医師の皆さんは非常に活躍されていますから、女性が来ると困るという考え方をされている人はいないと思います」

 ◇研究者にあこがれ医学の道へ

 桝氏は高校生の頃から研究者にあこがれ、医学の道を選んだ。両親ともに書道家で、身内に医学関係者はいない。「芸術家になるような才能はなかったし、かといって会社に勤めるイメージもなかった。本やテレビで研究者の話を見て、面白いなと思いました」

 京都大学医学部を卒業後、神戸中央市民病院で2年間研修したのち、大学院に進学、基礎研究に没頭した。「中途半端なデータでは許されない。一つ一つ確実なものを追究する。ごまかすのではなく必ず正攻法で解くという厳しさがありました」

 昼食時間にも論文を読むランチタイムセミナーが連日開催され、寸暇も惜しんで研究に取り組む環境の中で、研究者としての基礎が培われた。世界中の研究者が競う中、桝氏が最初に代謝型グルタミン酸受容体のクローニングに成功する。「研究成果は薬の研究開発につながっています。現在、臨床で一番研究が進んでいるのは、うつ病の薬です」

 創薬に結び付けば、恩恵を受ける患者の数ははかり知れない。

 ◇社会に貢献できる総合力を

 卒業後の進路は臨床医だけでなく、研究者や行政官など実に幅広い。どの道に進んでも社会に貢献できる教育を目指している。

 「医師というと病院で働くイメージだけになりがちですが、私自身、基礎の研究者ですし、実際にはさまざまな選択肢がある。社会への貢献の仕方は人それぞれ違います。自分の一番いいところを伸ばして活躍していってほしいと思います」

 研究に関心がある学生には、早くから最先端の医学研究に参加できる環境を与え、5年次後半からの半年間、大学院生と同じように研究に専念できる「新医学専攻」というコースも設けている。「例年、5~10人程度、希望する学生がいて研究成果を論文にまとめた学生もいます」

 どの分野に進むにしても、特に桝氏が学生たちに期待するのが、自分で問題を見つけて解決する力を身に付けることだ。「われわれが医学部を卒業するときは、卒後10年もすれば知識は半分になるといわれました。知識量を増やすことも大事ですが、知識を自分でどう使うのか、自分で問題を発見して解決する、総合力が問われます」

 社会が変われば疾病構造も変わる。それに応じて医療も変わっていかなければならない。同大学は、常に変わっていく状況の中で、自分の力を社会に役立てることのできる人材の育成を目指している。

【筑波大学医学群医学類の沿革】
1962年 東京教育大学5学部の統合移転候補地の調査を決定
  69年 文部省に筑波新大学創設準備調査会を設置
  70年 筑波研究学園都市建設法制定
  71年 文部省に筑波新大学創設準備会を設置
  73年 国立学校設置法等の一部を改正する法律により、筑波大学を設置。第一学群、医学専門学群、体育専門学群及び付属図書館をもって開学
  75年 第二学群、芸術専門学群、大学院修士課程及び大学院博士課程を設置
  76年 付属病院を開院
  78年 医療技術短期大学部を併設
  92年 江崎玲於奈氏、学長に就任
2004年 国立大学法人法により国立大学法人筑波大学を設置
  07年 学群の改組・再編に伴い、人文・文化学群、社会・国際学群、人間学群、生命環境学群、理工学群、情報学群及び医学群を設置

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