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第5回 法人と個人で異なる承継パターン
【開業医のためのクリニックM&A】 岡本雄三税理士事務所・MARKコンサルタンツ代表 岡本雄三

 医師になれば、一般企業に就職するよりもステータスが高く、1000万円以上の所得が保証され、将来は安泰―。こうした考えから、医学部人気がますます高まっています。

 私のクライアントである地元の優良企業のオーナーたちの間でも、子どもたちを自社の後継者にするのではなく、医師にするため、医学部に進学させるケースが増えている印象です。

 ◇人気の医学部進学

 「週刊朝日」4月26日号の記事によりますと、医学部合格者ランキングのトップは、12年連続で名古屋が地元の東海高校。

 国公立大学の医学部合格者数は、2位の灘高校の90人を大幅に上回り、唯一、3桁の116人に上りました。

 さらに、私立大学の医学部進学者を加えると、卒業生のほぼ2人に1人は医学部に進学しています。

 昨年、医学部ブームを背景として、いわゆる「不適切入試」が大きな話題となりました。

 今春の医学部合格者では、問題が発覚した大学以外でも、女子学生の占める割合が明らかに上昇しました。

 全国に医学部専門予備校を27校展開するメディカルラボの調べでは、合格者を前年と比べると、女子は1.2倍、多浪生は1.4倍ほどに増えました。

 前年までは、女子と多浪生を制限していたと疑われても仕方がない数字です。

 さて、本題に移らせていただきます。

 今回は、前回示した「クリニックM&Aを成功に導く六つのポイント」の中の「ポイント2」について、説明をさせていただきます。

 ◇医療法人と個人開業のM&Aの違い

 クリニックの事業承継の場合、その形態によって、M&Aのスキームが違ってくるため、まずはクリニックM&Aの承継パターンを知ることが必要です。

 一般的なパターン分類としては、次の四つがあります。

 (1) 個人開業のままで承継

 (2)旧法(2007年3月まで)の医療法人のままで承継

 (3)新法(同年4月から)の医療法人で承継

 (4)個人事業を医療法人に組織変更してから承継

 私の事務所では、これまで多くのクリニックの事業承継を手掛けてきました。その事例の9割以上は(1)か(2)のいずれかです。

 クリニックM&Aの主流である(1)個人開業の承継、(2)旧法の医療法人の承継―について、具体的に説明します。

 個人開業クリニックのM&Aと、医療法人クリニックのM&Aでは、大きくスキームが異なります。

事業承継の基本的考え方(拙著「開業医のためのクリニックM&A」幻冬舎より)


 ◇雇用や負債は引き継がない

 個人開業のM&Aは、「資産売却」という形で、クリニックを承継します。これは、中古の家を購入するのと同じようなイメージです。

 引き継ぐのは、クリニックの建物や医療機器だけで、資産以外の負債などは原則引き継ぎません。前の家主の住宅ローンを次の家主が引き継がないのと同じです。

 譲渡価格は「固定資産の時価」に「のれん代」を加えた価格になるのが基本です。「のれん代」というのは、クリニックの将来性や収益性を加味した営業権のことです。

 診療圏に競合が少なく、常連患者を多く見込めるような場合は、「のれん代」が高めになります。

 反対に診療圏内に競合が多く、患者数が減少傾向にあるような場合は、「のれん代」が低めになります。



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