「障子戸」開くと家族の顔
~ワンタッチ面会テレビ導入―JR東京総合病院~
看護師の負担を減らすとともに、患者とその家族の利便性を高めよう―。JR東京総合病院(渋谷区代々木)は3月の新病棟開業に合わせ、ワンタッチ面会テレビ「ソバニル」のサービスを始めた。専用端末を入院患者と家族に貸し出し、病室と自宅を常時オンラインで結ぶことで入院患者の寂しさが紛れ、家族側にとっても安心感を得ることができる。

簡単にビデオ通話ができる「ソバニル」=JR東日本提供
◇ソバニル、操作は簡単
自動で立ち上がる画面には障子戸が映し出される。タッチすると、障子戸が開き、家族らと会話ができる。障子戸は病室と自宅の双方から開くことができる。新型コロナウイルス感染症で病院やクリニック、介護施設では面会が制限され、オンライン面会サービスが注目された。しかし、従来のサービスでは患者や家族は操作が難しく、看護師が手伝う場合も多い。通常業務に加わることで負担は大きかったという。
ソバニルを開発したのは、ジェイアール東日本企画。ビデオ通話は高齢者にとって分かりづらい点に考慮したという。障子戸を閉じると、光を感知する照度センサーにより、お互いの部屋の明るさを障子の色で知ることができる。暗ければ眠っていることが分かる。看護師による処置を受けている時など、面会に応じられない場合もある。その時は、鍵をかける機能によって障子戸は開かない。

ワンタッチ面会テレビ「ソバニル」=JR東日本提供
◇看護師から家族へメッセージ
「携帯電話でのオンライン面会の場合、患者さんが携帯の操作ができず、看護師が午後3時から10分などと時間を決めて、そばで介助していました。ソバニルであれば、起床から就寝まで、ご家族と会話でき一緒に過ごせる環境がつくれます」
看護師長の吉田千香子さんはこう話し、続ける。
「この病院に入院する患者さんは東京都内だけにとどまらす、茨城県の方も福島県の方もいます。高齢な夫婦にとってパートナーの面会に訪れるのは大変です。ソバニルはとても役に立つと思います」

左から吉田千香子看護師長。主任看護師の飯田由喜子さん、矢部翔太さん=JR東京総合病院
ソバニル導入に当たっては実証実験を3回繰り返し、病院の医療関係者と39人の入院患者、その家族の意見を聴いた。看護師から最も強かった要望は、入院患者の家族へのメッセージ機能を付与することだ。
「着替えを持って来てください」
「おむつが間もなく足りなくなります」
家族の携帯電話に連絡しても、1回で出ないこともある。主任看護師の飯田由喜子さんは「ご家族がお忙しい中で、何度もお電話することに心苦しさがありました。メッセージで伝えられるので便利です」と言う。
吉田さんは「こちらから電話すると、『容体が急変したのではないか』とドキッとします。そのためにメッセージ機能を求めたのです」と付け加える。
◇導入拡大へ
ソバニルの画面は約15インチ。実証実験の結果、小さ過ぎず、大き過ぎもしないサイズに落ち着いた。
主任看護師の矢部翔太さんは「友人の看護師にソバニルの話をしたところ、『うちの病院にもぜひ入れたい』と強い関心を示していました。将来的に広がればいいですね」と話す。
ソバニルの利用費は個室料金に含まれており、利用希望者は自由に使用可能だ。ただ、同病院でソバニルを導入しているのは現在、特別個室だけ。病院関係者は早く一般個室にも導入したい考えだ。(鈴木豊)
(2025/05/23 05:00)
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