治療・予防

歯周病予防へ定期健診を
~専門家は職場での実施呼び掛け~

 6月4日の「虫歯予防デー」にちなみ、4~10日は「歯と口の健康週間」だ。日本歯科医師会の調査では、歯科医療機関で定期的にチェックを受けている人は半数弱にとどまる。永久歯の抜歯要因で最も多いのは歯周病だが、歯周疾患検診の受診率は低い。こうした状況に歯科衛生士らは定期的にチェックを受ける重要性を訴える。

サンスターが始めた口腔ケア支援サービス「スマイルスキャン」の画面

サンスターが始めた口腔ケア支援サービス「スマイルスキャン」の画面

 ◇受診者、半数弱にとどまる

 日本歯科医師会が全国の15~79歳の男女1万人を対象に昨年インターネットで実施した調査では、歯科医療機関で「定期的なチェックを受けている」との回答は48.6%で、コロナ禍前の2018年(43.4%)より増えた。このうち34.8%が「現在は治療を受けていないが定期的なチェックを受けている」と答えた。

 定期チェックの受診頻度は「3カ月に1回以上」が59.1%、「半年に1回程度」が30.0%で、9割近くが半年に1回以上受診していることになる。

 定期チェックを受ける理由は「定期的な管理(チェック)を受けると安心できる」(53.7%)、「歯周病や虫歯などの予防ができる」(41.6%)が上位になった一方、「歯科医療機関からハガキやメールで案内が届くから」は18年の31.5%から23.5%に減少した。

 ただ、「20本以上歯を保っていればおいしく食べ続けられ、健康長寿につながる」「歯周病を放置すると細菌の温床となり、ウイルス感染しやすくなる可能性がある」など、歯や口の健康と全身の健康に関する事柄については20年と22年の調査よりも認知度が下がった。特に10代と20代の認知度が低く、20年と比べると全世代で低下した。厚生労働省の調査では歯周疾患検診の受診率は5%程度にとどまっている。

 ◇知らぬ間に病状進行

 歯周病は細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患で、歯を支える骨が炎症によって徐々に壊され、最後は歯が脱落する病気だ。自然治癒はほぼ期待できない上、初期段階は違和感や痛みといった自覚症状がほとんどないため、気付いた時にはかなり進行しているケースも少なくない。

 最近では歯周病が狭心症や心筋梗塞など全身疾患に関連するといった研究報告も多く発表されているほか、歯の喪失による口の機能の衰えが認知症や寝たきり状態につながるリスクも指摘されている。

野田めぐみさん

野田めぐみさん

 企業向けの歯科健診などを行うサンスター財団の歯科衛生士、野田めぐみさんは、予防として「最も基本となるのは毎日の正しい歯磨き」と強調する。歯周病の原因となる歯垢(しこう=デンタルプラーク)は、歯と歯茎の境目にある「歯周ポケット」にたまりやすいため、そこを意識して丁寧に磨くことが有効だ。また、歯ブラシだけでは届かない歯と歯の間は、デンタルフロスや歯間ブラシを使ってきれいにする必要もあるという。

 加えて、定期的な歯科受診も大切。野田さんは「歯周病は自覚症状が乏しくなかなか気付けない病気なので、問題がないと思っていても定期的にチェックや口のクリーニングを受けて、自分に合った効果的な歯磨き方法を歯科医師や歯科衛生士に教えてもらって身に付けることが重要だ」と説明する。

 ◇生活習慣もリスクに

 歯を磨く回数が少なかったり、時間が短かったりする人は歯周病になりやすい。喫煙やストレス、糖尿病なども危険因子となっている。野田さんは「歯周病になりやすい人には幾つかの特徴がある。日常生活での習慣や体質が歯周病のリスクを高めていることが多いため、自分自身の生活を見直すことが大切だ」と指摘する。

 歯科健診は1歳半と3歳、小中高生で義務付けられているが、大学生や社会人は義務化の対象外になっている。そこで政府は22年、経済財政運営の基本方針(骨太の方針)に、歯の健康を維持して他の病気の誘発を防止するための「国民皆歯科健診」の導入を盛り込んだ。

 近年、職場での健康管理の一環として歯科健診を取り入れる企業が増えているが、定期的に受けている社会人は少ないのが現状だ。歯周病は就労世代の20代後半から患者が増えていく。口の状態が悪いと、集中力の低下や体調不良につながり、欠勤や早退の原因にもなりかねない。野田さんは「職場での歯科健診は従業員の健康維持や仕事のパフォーマンス向上に大きな役割を果たし、結果として企業にも大きなメリットをもたらす」と話す。

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