市民による救命活動
~バイスタンダーの役割(千葉市立海浜病院 本間洋輔統括部長)~
人が突然倒れたり事故に遭ったりした現場で、居合わせた人や救命活動に取り組む人を「バイスタンダー」と呼ぶ。突然、心停止になる人は年間約9.1万人。誰でも遭遇する可能性がある救命現場での対応や日ごろの心構えについて、千葉市立海浜病院(千葉市美浜区)救急科の本間洋輔統括部長に聞いた。

バイスタンダーのストレスへの対処法
◇多くの人を集める
心停止した人への心肺蘇生や異物が気道に詰まった人への異物除去など、バイスタンダーによる1次救命処置により、救命率は高まるという。
傷病者を見掛けたら、まず声を掛けて意識を確認する。必要なら119番通報して救急車を要請し、救急車到着までの指示を受けるのが基本的な流れだ。
同時に、なるべく多くの人を集め、周囲の人は何が手伝えるかを尋ねるのも重要だという。本間統括部長は「例えば、心肺蘇生の際にしっかり行う必要がある胸骨圧迫はとても疲れるので、1~2分で交代するのがよいです。傷病者のプライバシーに配慮し、外部から見られないよう多くの人が『壁』になることも大切です」と話す。
自動体外式除細動器(AED)の場所を知っている人が、より早く走れる人に対し取って来るよう頼むのもよい。こうした理由から、救命現場では一人でも多くの人がバイスタンダーとして活動に当たるのが理想的だ。
とはいえ、いざというときにはためらってしまうもの。備えのために「救命講習会を受講してほしい」。本間統括部長自身もNPO法人「ちば救命・AED普及研究会」(千葉県市川市)を立ち上げ、救命教育に尽力している。「日常的な行動範囲内のAEDの位置確認や、地図でAEDの位置が検索できる日本AED財団(東京都千代田区)の専用アプリをスマホにダウンロードすることもお勧めです」
◇救命した人のケアも
市民による救命は重要だが、バイスタンダー自身が精神的ストレスを感じる点も課題だという。「興奮状態で眠れない」「仕事が手に付かない」「傷病者が亡くなり自責の念にかられる」といったケースが見られるからだ。
本間統括部長も同様の相談を受け、バイスタンダーの精神的ケアの必要性を痛感。千葉市立海浜病院に「バイスタンダーサポート外来」を開設した。現在、千葉市消防局の相談窓口を通じて受診予約を受け付けている。ストレスを感じたら友人や家族に相談したり、散歩など楽しいと思えることを実行したりするのもよいという。
「バイスタンダーによって助かる命があります。一方、どうしても助からない命があることも事実ですが、決してバイスタンダーの責任ではありません。結果的に助からなかったとしてもご自身を責めたりしないでください」。今後もバイスタンダーのサポート体制強化を進めるという。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2025/05/21 05:00)
【関連記事】