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新型コロナウイルスが猛威を振るい続けている。日本国内でも次々に感染者が確認されており、海外からの感染を防ぐ水際対策から、国内での感染拡大の防止が課題になり、医療機関の間で危機感が高まっている。これまで国内での主な対策は、中国湖北省武漢市など中国の特定地域から渡航・帰国した人や患者と近い距離で会話をするなど濃厚接触している人が検査や診察の対象だった。
中国での新型肺炎重症患者の治療(EPA=時事)
このため国内での感染が検査の対象にならずに見落とされる可能性がある。このような状態に備えて、感染初期で軽症の患者や風邪などの症状で受診する人たちの増加に対応できるかどうか、医療関係者を想定して対応指針を策定した病院もあった。
◇病院としての対策作り
感染症指定医療機関ではない昭和大学病院(東京都品川区)は、独自に「新型コロナウイルス肺炎疑い患者診療手順」を2月4日に改訂し、感染症内科や呼吸器・アレルギー内科、小児科や救急診療科などを中心に対応の制度づくりを急いでいる。
厚生労働省が検査の対象として武漢市渡航歴などの条件を規定していた一方で、そうした条件を満たさない場合でも、症状が重く新型ウイルスの識別を必要とすると医師が判断した患者に対しても「疑い事例」として対応する。平日の日中などは呼吸器・アレルギー内科(成人)か小児科(小児)が、夜間の休日は救急診療科か小児科が、救急外来面談室で診察するとしている。
さらに、医療スタッフは診察時に医療用マスクやエプロン、手袋を装備。ウイルス検査だけでなく、肺炎など呼吸器症状を発見するために胸部X線や尿検査をすることも規定した。
二木芳人昭和大特任教授
◇軽症・無症状者により感染拡大も
同病院感染症内科の二木芳人特任教授は「(取材を受けた)2月5日時点で武漢市からの帰国者を見れば、軽症者が多い。湖北省や浙江省以外からの入国者の中に含まれている軽症者や症状が出ない不顕性感染の患者によって、日本国内にウイルスが持ち込まれ、国内で感染が拡大する恐れがある。このために、今から体制を整える必要がある」と体制整備の狙いを語る。
「現在の患者がどのような経緯をたどるのか、重症化する比率はどの程度なのかなど、中国からの情報がまだ不足しており、どのような展開になるか予想できない。一例を挙げれば、武漢市では多くの重症者や死者が出ているが、海外はもちろん中国国内でも武漢以外では死者や重症者の比率は大きく低下している」と指摘。「推論」と前置きした上で、患者の多発で医療システムがパニックに陥った武漢周辺以外では、ある程度の治療で回復しているのではないかとみる。それほど病原性は高くはなく、重症化しにくいことが想定されると解説する。
相良博典昭和大教授
◇軽症患者が多い可能性
実際に患者の診察に当たることになる同病院呼吸器・アレルギー内科の相良博典教授は「飛沫(ひまつ)感染によるウイルスの呼吸器感染であれば、上気道から気管支を経て肺に症状が広がっていくのが通常のパターンだ。このウイルスも、風邪やインフルエンザと同様に、上気道炎や気管支炎を経て肺炎を引き起こしているのではないか。そうなれば、肺炎まで悪化する前に回復している軽症患者が多くいることが想定される」と話す。
通常のコロナウイルスは上気道炎(風邪)や気管支炎の原因となる。これらの病気に特定の抗ウイルス薬はないが、ほとんどが1週間程度で自然に治癒する。新型コロナウイルスでも、この段階では安静と経過観察などの対策以外はないのが実情だ。肺炎へと進行した場合でも、人工呼吸による呼吸の維持と解熱や水分補給など対症療法が中心になる。
◇危険な細菌性肺炎
「1917年のインフルエンザの大流行でも、多くの患者が免疫低下による細菌感染で起きた二次感染性の肺炎で死亡している。ごくまれに起きるウイルス性の劇症肺炎も怖いが、臨床現場ではまず細菌性肺炎を押さえ込むのが重要になる」と指摘。その上で「過度に恐れて、2009年の新型インフルエンザの流行時のように、風邪や通常のインフルエンザを新型と誤認して専門医療機関に殺到するのが一番怖い。逆に肺炎でも高熱など典型的な症状が出にくい高齢者やぜんそくなどの呼吸器関連の持病のある人は、体調不良を感じたら早めに医療機関を受診してほしい」と呼び掛けている。(喜多壮太郎・鈴木豊)
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