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もしあなたの目の前で誰かが突然倒れたらどうしますか。どのように対処すればいいか分からず、思わず慌ててしまうのではないでしょうか。
倒れた人が呼吸をしていなかったら、落ち着いて心臓マッサージを
◇できる処置は医師も同じ
実は病院の外で人が倒れた時にできることは、専門家でもそうでない人でも変わりません。私たちは、ブラックジャックのように聴診器や薬、手術器具などを持ち歩いているわけではありません。救急車を呼ぶとしても、救急隊に引き継ぐまでの間に限られたリソースでできることは誰もが同じなのです。
人が突然倒れ、心肺停止に陥った時にすべき基本的な処置を、BLS(Basic Life Support:一次救命処置)と呼びます。専門的な器具や薬などを使う必要がなく、正しい知識と方法を知っていれば、誰でもできる処置です。消防庁などが全国各地で一般向けに講習を開き、多くの人がBLSに参加できるよう啓発を続けています。
◇1秒も無駄にできない
なぜ、これほどBLSが重視されるのでしょうか。
心肺停止に陥った患者さんを救命できるかどうかは、「倒れた瞬間に周囲にいた人がどう対処できたか」に大きく左右されるからです。心肺停止が起こると、1秒も無駄にはできません。
では、BLSとは具体的にどんな処置を指すのでしょうか。手順を簡単に解説してみましょう(日本ACLS協会ガイドhttps://acls.or.jp/dictionary/bls/参照)。
まずは、周囲の安全確認です。救助に当たった人が何らかの被害を受けてしまっては本末転倒。二次災害を防ぐため、まずは救助者の安全が最優先です。
次に、通報と自動体外式除細動器(AED)の要請です。一人でできることは限られています。必ず周囲の協力を得なければなりません。大声で叫ぶなどして助けを呼び、近くにいる人に119番通報をお願いし、AEDを持ってくるよう要請します。自分自身がリーダーとなって司令を出す心構えが大切です。
◇テンポは歌で記憶
ここまできたら、呼吸を確認してください。呼吸をしていない、または正常な呼吸ではないと判断された場合は心肺蘇生を開始します。心肺蘇生とは、胸骨圧迫(心臓マッサージ)、気道確保、人工呼吸です。
胸骨圧迫は、胸の中央に手の付け根を置き、ひじを真っすぐに伸ばして胸を圧迫します。少なくとも5、6センチ程度沈むよう、胸を押し込むことが大切です。テンポは1分間に100回(BPM100)。このテンポは、「アンパンマンのマーチ」や「世界に一つだけの花」「あんたがたどこさ」などの歌と同じだと考えると覚えやすいでしょう。
また、あおむけに寝かせた状態で額に手を当て、もう片方の手を下顎に添え、顎を突き出すような姿勢になるようにします。これにより、空気の通り道が直線的になり、気道確保ができます。
人工呼吸は、鼻を押さえ軽く胸が上がる程度に息を吹き込む処置です。胸骨圧迫30回ごとに2回息を吹き込むのが目安です。
◇適切な行動が命を救う
AEDが入手できた場合は、すぐに装着します。AEDは、専門知識がなくても簡単に使えるよう、全ての操作を音声で指示してくれます。
電源を入れ、音声指示にしたがって胸の二カ所にパッドを貼ったのち、指示があればボタンを押して電気ショックを与える、という流れです。電気ショックが必要かどうかも全て機械が判断し、音声で指示してくれるのです。
電気ショックの後はすぐに胸骨圧迫を再開します。正常な呼吸が現れるなど、明らかな回復が確認できた場合を除き、心肺蘇生は中断せずに続け、救急隊に引き継ぎます。
以上のことは、「誰でもできる」とはいえ、なかなか複雑だと感じる方も多いでしょう。特に、スポーツインストラクターや学校の先生、保育士、アミューズメントパークの職員らは、BLSが必要な時に実践できるよう、一般向け講習を受けておくのがお勧めです。
適切な行動が、誰かの命を救います。ここに書いた内容を、ぜひ覚えておいていただけると幸いです。(外科医・山本健人)
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