2024/12/06 17:18
キャラクター活用による病院内での心地よい空間づくりの取り組み
超高齢化社会を迎え、認知症診断・治療法開発は喫緊に解決すべく社会問題の一つになっています。認知症の約6割がアルツハイマー病です。近年の分子生物学的手法を用いた基礎的研究の進歩により、根本的な治療法として病態に基づいた分子標的治療法(抗アミロイド薬)開発が現実味をおびてきています。根本的な治療薬を開発するためには、生体(生きている状態)での背景病理を明らかにする必要があります。「脳」は他の臓器と異なり、生検により病理組織を確認することが、原則として難しい臓器です。現在、生検に変わる手段として、髄液中アミロイドβやリン酸化タウ測定、アミロイドPET検査により背景病理の把握が間接的に可能です。しかし、これらの検査は未だ保険収載されていないことや侵襲性の点から、日常診療への応用が困難な状況です。実臨床でより使いやすく、安価で簡便な客観的指標であるバイオマーカーの開発が不可欠です。
血液脳関門は、脳を保護するために生体が備えているバリア機構です。身体の至る所にまで張り巡らされている体循環系の毛細血管は有窓性であり、組織との必要な物質交換が円滑に行われています。一方で、中枢神経系の毛細血管は血液脳関門の存在により無窓性の構造をとります。この血液脳関門の機能的な役割は、①有害物質の中枢神経系への流入制限、②必須物質の選択的な取り込み、③有害物質の排出の大きく3つに分けられます。最近の研究では、アルツハイマー病患者脳における神経機能障害の原因と考えられるアミロイドβの蓄積に、血液脳関門の排泄機能障害が関与していることが明らかにされました。ヒトを対象とした血液脳関門機能の評価方法を確立することは、アルツハイマー病の新たなバイオマーカーとして、治療薬の開発に寄与できる可能性が期待されています。
今回、名古屋市立大学松川則之教授、打田佑人研究員(神経内科学分野)らの研究チームは、血液脳関門を構成する脳小血管に異常を呈する遺伝性疾患(cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy:CADASIL)を有する患者を対象に、最新の画像技術を駆使した磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Image:MRI)を用いて、血液脳関門機能を評価する観察研究を行いました。名古屋市立大学および関連病院との多施設共同画像研究において、① 遺伝性の脳小血管病であるCADASIL患者において血液脳関門の機能障害とその部位がMRIで測定できること、② 血液脳関門の機能障害が認知機能に悪影響を及ぼすことを世界で初めて明らかにし、米国科学誌「Neurology」に報告しました。
CADASILは、遺伝性脳小血管病の代表的疾患であり、Notch3のミスセンス変異によりひきおこされる常染色体優性遺伝性疾患です。中枢神経組織の微小循環系における血液脳関門の機能障害を有する点において、アルツハイマー病と共通の病態機序が想定されています。本研究により、血液脳関門の機能障害とその部位をMRIで測定できたことは、脳小血管病の疾患バイオマーカーとして、治療・予防法の開発に役立つ重要な発見です。今後、この方法を応用して、アルツハイマー病の背景病理の可視化に向けた更なる研究が期待されます
血液脳関門機能画像
ポイント
・血液脳関門は、脳を保護する中枢神経組織特有のバリア機構です。
・血液脳関門の障害は、認知機能に悪影響を及ぼします。
・血液脳関門機能の評価方法は確立されておらず、ヒトを対象とした画像バイオマーカーの開発が望まれています。
・脳小血管病は、血液脳関門を含む脳の微小循環に障害のある疾患の総称です。
本研究では、遺伝性脳小血管病を対象に、最新の画像技術を用いて血液脳関門の機能障害とその部位の特定に成功しました。
・本研究の成果により、これまでは難しかったヒトにおける血液脳関門の評価が可能になり、血液脳関門の機能維持に向けた治療・予防法の開発が期待されます。
【研究成果の概要】
名古屋市立大学大学院医学研究科の松川則之教授、打田佑人研究員(神経内科学分野)らの研究チームは、ヒトの血液脳関門機能を測定する画像技術の開発を目指して、MRIを応用した研究を行ってきました。このたび、名古屋市立大学および関連施設と共同で行った多施設共同画像研究において、遺伝性の脳小血管病であるCerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy(CADASIL)患者において血液脳関門の機能障害とその部位の特定に成功し(図1)、血液脳関門の機能障害が認知機能に悪影響を及ぼしていることを新たに見出しました。
(2020/07/21 17:14)
2024/12/06 17:18
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