医学の窓辺

血液脳関門の機能障害を画像化することに成功-名古屋市立大学 ~遺伝性脳小血管病患者に、最新の画像技術を応用した研究結果を発表~

【掲載された論文の要旨】
背景
血液脳関門の障害は、認知機能に悪影響を及ぼすことが知られています。私たちは、遺伝性の脳小血管病であるCADASIL患者において、血液脳関門の機能を評価する多施設共同画像研究を行い、同患者における認知機能との関連を調べました。
方法
はじめに、21名のCADASIL患者の背景と身体学的検査、神経学的検査、高次脳機能検査、血液検査を記録しました。続いて、脳卒中の既往がある10名のCADASIL患者をSymptomatic群、脳卒中の既往がない11名のCADASIL患者をAsymtomatic群に分類し、21名の健常者と合わせて、42名を対象に脳MRIを施行しました。脳MRIでは、コンピュータ上の解析により、血液脳関門透過性指数(BBB permeability Ktrans value)と、血液脳関門の破綻により漏出する脳内鉄蓄積量(Quantitative susceptibility mapping value:QSM value)を測定しました。

脳内鉄蓄積量の全脳解析結果

結果
 認知機能は、3群間でMontreal Cognitive Assessment(MoCA)スコアに有意な差を認めました。脳MRI解析の結果、被殻や尾状核、側頭極、半卵円中心といった認知機能に影響を与え得る部位において、Symptomatic群で有意に脳内鉄蓄積量が増えていることがわかりました(図2)。さらに、同部位におけるQSM valueとKtrans valueは正の相関を認めており、脳内鉄蓄積量と血液脳関門透過性に関連性があることが示されました。一方で、QSM valueとMoCAスコアは負の相関を認めており、血液脳関門の障害部位から漏出した鉄蓄積が認知機能に悪影響を及ぼしていることが明らかになりました(図3)。

認知機能との相関解析結果

結論
 本研究では、遺伝性脳小血管病のCADASIL患者を対象として、最新の画像技術を用いて血液脳関門の機能障害とその部位の特定に成功しました。本研究成果により、これまでは難しかったヒトにおける血液液脳関門の機能評価が可能になり、血液脳関門の機能維持に向けた治療・予防法の開発が期待されます。

【研究助成】
 本研究は、文部科学省・日本学術振興会科学研究費補助金(JSPS 科研費 JP 19K17148、17K15805)による助成を受けて行われました。

【掲載された論文の詳細】

【論文タイトル】
Iron leakage owing to
blood-brain barrier disruption in small vessel disease CADASIL
「脳小血管病CADASILにおける血液脳関門の機能障害と鉄漏出」

【著者】
打田佑人12、菅博人3、櫻井圭太4、荒井信行3、戌亥章平5、小林晋6、加藤大輔1、植木美乃7、松川則之1* (*Corresponding author)
(以下、論文投稿時の所属機関)
1.名古屋市立大学大学院医学研究科 神経内科学分野
2.豊川市民病院 神経内科
3.名古屋市立大学病院 放射線科
4.帝京大学 放射線科
5.東京大学 放射線科
6.豊川市民病院 放射線科
7.名古屋市立大学大学院医学研究科 リハビリテーション医学分野

【掲載学術誌】
研究成果は、米国科学誌「Neurology(ニューロロジー)」に2020年6月25日掲載
「Neurology(ニューロロジー)」 DOI: 10.1212/WNL.0000000000010148

【お問い合わせ先】

松川 則之(まつかわ のりゆき)
名古屋市立大学大学院医学研究科 神経内科学分野 教授
〒467-8601 名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1

【図の詳細説明】

図1:血液脳関門機能画像
図1詳細:認知機能障害を有するCADASIL患者(Syptomatic)では、認知機能障害が軽度であるCADASIL患者(Asymtomatic)や健常者(Control)と比較して、血液脳関門透過性指数(Ktrans value)の上昇が明らかです。

図2:脳内鉄蓄積量の全脳解析結果
図2詳細:認知機能障害を有するCADASIL患者(Syptomatic)では、認知機能障害が軽度であるCADASIL患者(Asymtomatic)と比較して、被殻・尾状核・側頭葉・半卵円中心といった認知機能に影響を及ぼす部位での鉄蓄積量の増大が明らかです。

図3:認知機能との相関解析結果
図3詳細:被殻(Putamen)、尾状核(Caudate nucleus)、側頭極(Temporal pole)、半卵円中心(Centrum semiovale)では、QSM valueとKtrans valueは正の相関を示しています。一方で、Caudate nucleusとTemporal poleでは、QSM valueとMoCAスコアは負の相関を示しています。

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