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認知症の治療は、薬物療法と非薬物療法を組み合わせることで症状の進行を抑え、生活の質の向上を図るのが基本だ。睡眠障害、徘徊(はいかい)、抑うつ、妄想などの「認知症の周辺症状」に対しては非薬物療法が中心で、さまざまな研究が進められている。その一つである、化粧療法について、岡山大学病院(岡山市)脳神経内科の田所功医師に聞いた。
認知症高齢者への化粧療法(
▽開始直後から改善効果
認知症患者に対する非薬物療法には、音楽療法や回想法、レクリエーション療法などがある。薬物療法の選択肢が限られる中、医療機関や介護施設などでは非薬物療法を組み合わせて実施し、患者とのコミュニケーション手段としても活用している。
身だしなみを整えて心と体の健康増進を目指す化粧療法も注目されているが、科学的根拠があるとの報告は少ない。そこで、岡山大の研究グループは、介護施設に入所中の女性認知症患者36人を対象にその効果を検証した。
田所医師らが化粧療法を行った19人と、基本的なスキンケアだけした17人を比較したところ、化粧療法の開始直後から周辺症状の改善効果が見られた。「開始3カ月後の認知機能の評価スコアでも点数が改善しました」
▽見た目年齢の若返り
さらに人工知能(AI)を使った解析でも、見た目年齢の若返りが示され、喜びの感情が増加した。また長期的な効果として、化粧療法を実施する前に、化粧をするとうれしくなる程度が大きい人の方が日常動作が活発になるなど改善効果が高い傾向があったという。「見た目がよくなるだけでなく、化粧を通じたコミュニケーションや直接肌に触れることによる影響が推定されます」
このように成果が期待できる化粧療法。一部の医療機関や介護施設などで取り入れられているが、在宅も含めた多様なケアの場での活用が望まれる。
一方、医療従事者への普及を図るには、科学的根拠をさらに示す必要がある。「症例数を増やし、軽度認知障害の段階での介入効果など、今後明らかにすることが重要です」と田所医師は話している。(メディカルトリビューン=時事)
(2022/11/12 05:00)
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