治療・予防

不調招く「リーキーガット症候群」
~腸から有害物質漏れ出す(小西統合医療内科 小西康弘院長)~

 慢性的な疲労感や胃腸症状など、全身の不調に悩まされているのに原因が分からない。こうした状態の一因として、腸の細胞の隙間が広がり、有害物質が漏れ出す「リーキーガット症候群」の可能性があるという。

腸管細胞の隙間が広がるリーキーガット症候群

 ◇有害物質が体内に

 リーキーガットとは、リーキー(漏れる)ガット(腸)の意味だ。その名の通り、未消化のタンパク質や有害物質、悪玉菌などが腸から漏れ出して体内に流れ込み、本来体内には入らない物質が全身を巡る状態をいう。

 リーキーガットを引き起こす要因として、腸内環境の悪化、腸の血流低下、一部の薬などが指摘されている。小西統合医療内科(大阪市北区)の小西康弘院長はこのうち腸内環境を重視し「食事や生活習慣が、腸内環境にどのように影響を与えるのかを知ってください」と話す。

 リーキーガットの診断法や治療法は確立していない。どのような疾患を引き起こしているかについても不明な点が多く、研究途上だ。吐き気や腹痛、下痢便秘、関節痛、記憶力低下やうつ、じんましんぜんそくなどの数々の不調のほか、数日から数週間後に発症する遅延型食物アレルギーの原因になる可能性が考えられているという。

 一方、腸内に生息する腸内細菌叢(そう)と呼ばれる細菌群は、栄養素を作り出す一方、有害物質を除去する役目も担っている。小西院長は「糖類の多い食品やジャンクフードの食べ過ぎ、過度の飲酒、抗生物質やステロイド剤などの長期服用、強いストレスなどが重なり、この腸内細菌叢のバランスが崩れ、腸内バリアーが傷ついてリーキーガット症候群を引き起こすことがあると考えられています」と説明する。

 ◇腸内環境を改善

 腸内環境を改善するには、単にサプリメントを服用すればよいわけではない。「検査で腸の状態を調べ、数値に基づいて腸のバリアー機能を回復させていく必要があると考えています」と小西院長。

 同クリニックでは、血液検査で遅延型の食物アレルギーがないかを調べ、便から腸内細菌のバランスや腸管の炎症、消化酵素の分泌がないか、尿中の代謝産物から体内の化学反応は正常かを診る。

 こうした検査は公的医療保険の適用を受けておらず、有効性は検証中で、同クリニックはすべて自費診療で行っている。

 同クリニックでは、腸内粘膜を傷つける食品や不要な医薬品を控えるよう指導し、腸内細菌叢のバランスを整えて腸内環境の改善を目指す。小西院長は「改善には、数カ月から年単位の時間が必要になることもあります。しっかりと理解して取り組むようにしましょう」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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