便秘の解消で健康に
~腸内環境整えるビフィズス菌~
大腸の機能劣化は健康へのリスクに直結する。私たちに身近な大腸のトラブルは便秘で、肌の荒れや肥満にとどまらず、糖尿病や脂質異常症、免疫や認知機能といった全身の健康に影響を及ぼす。20年以上にわたって「便秘外来」で患者を診療してきた小林メディカルクリニック東京の小林暁子院長は「便秘の解消がさまざまな面で健康増進につながる」と強調している。
大腸劣化によるトラブルのイメージ
◇「大腸の社長」になろう
腸内細菌には、善玉菌、悪玉菌、日和見菌の三つがある。ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌は腸の運動を活発にし、感染を予防したり、発がん性のある腐敗物が作り出されるのを抑制したりする。ウェルシュ菌やブドウ球菌などの悪玉菌は肥満や糖尿病、動脈硬化などの疾患と深い関係がある。バクテロイデスなどの日和見菌は体が弱ったりすると悪い働きをする。
便は体に吸収されなかった老廃物(ゴミ)を含み、便秘はおなかの中にゴミがたまった状態だ。「あなたは大腸という『会社』の社長。社員である腸内細菌に清潔な職場環境と栄養のある食物を与え、さまざまな特色のある良い社員、つまり善玉菌を増やすつもりでやってほしい」。小林院長は分かりやすい例えを使ってアドバイスしてきた。
短鎖脂肪酸の多様な働き
◇痩せ菌とデブ菌
腸内細菌に関して、「痩せ菌」、「デブ菌」という捉え方もある。水溶性食物繊維やオリゴ糖を好む痩せ菌のビフィズス菌は、食物繊維をエネルギー源として「短鎖脂肪酸」を作る。小林院長が「スーパー物質」と呼ぶ短鎖脂肪酸は、腸の抗炎症作用とバリアー機能を高めるとともに、基礎代謝量を増やす。さらに、満腹中枢を刺激し、食欲をコントロールする。
一方、肥満タイプの人はデブ菌(ファーミキューテス)が多く、過剰なエネルギーをため込みやすいため、脂肪として蓄積してしまう。遺伝的にデブ菌が優勢だというケースもある。
◇早ければ2週間で効果
善玉菌の代表で痩せ菌でもあるビフィズス菌は、便秘解消にも有効だ。小林院長は「ビフィズス菌が入ったヨーグルトを積極的に摂取してみよう」と勧める。
「肌の色艶が良くなり、周囲から『肌がきれいなったね』と言われた」とうれしそうに報告する人を見て、小林院長は「確かに印象が変わったな」と感じたという。体重が10キロも痩せた人もいれば、糖尿病や高脂血症の数値が改善し、かかりつけ医師を驚かせた人もいる。腸内環境を整える効果は、早ければ2週間、遅くても1カ月くらいで表れるという。小林院長は「まずは2週間、試してほしい」と話す。
ただ、ヨーグルトを取り過ぎるのは良くない。過剰な摂取は、軟便になったり、体を冷やしたりする。週に4日から7日、1日当たりの量は100~200グラムを目安としたい。
一方、デブ菌を増やさないためにはどうしたらよいか。小林院長は「動物性に偏った食生活は勧められない」とするとともに、睡眠時間の極端な変化は好ましくない。起床時間を変えずに、疲れたと感じるときは早めに就寝してほしい」と言う。
小林曉子院長
◇ヨーグルトを料理にも活用
腸には約1000種類の腸内細菌がおり、「腸内フローラ」と呼ばれる。同クリニックでは、この腸内フローラの検査を行うことができる。便秘や下痢などの症状がない人でも「自分の体質を知りたい」と検査を希望するケースも少なくない。問題はダイエットだ。糖質を一切取らないなど極端な食事制限をしている人を検査すると、善玉菌が減少していることが分かる。「歯の状態が悪く、食が細い高齢者の場合と似たような症状だ」と、小林院長は指摘する。
年齢とともに減っていく善玉菌を補うためには、ヨーグルトやチーズ、納豆などの発酵食品の摂取が有効だ。日本ではヨーグルトは「デザート」として食べるイメージがあるが、ヨーグルトをソースやドレッシングとして料理に活用している国もある。これには余分な塩分を必要としないというメリットもある。
◇自身の経験に学ぶ
小林院長によると、腸内フローラの乱れは大腸の劣化により全身のトラブルにつながる。便秘外来の創設には、小林さん自身の体験も関係している。「大学病院の研修医時代には日常的に便秘で苦しんだ。しょっちゅう風邪を引いたし、肌が荒れて老けて見えた」。下剤に頼ることもあったが、「腸内環境を整えた方がよい」と食事の改善に取り組んだ。40代で再び「腸活」を再開したところ、良い体調を維持するだけでなく、運動によって筋肉が付くようになったという。(了)
(2022/10/12 05:00)
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