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がんの診断や治療の進歩などにより、生存期間は延びている。ただし、がん患者の中で心臓病や脳卒中の最大の危険因子とされる高血圧に悩まされる人も増えている。がん患者の高血圧について、東京大学大学院(東京都文京区)先進循環器病学の金子英弘特任講師に話を聞いた。
がん患者における血圧値別の心不全リスク
◇治療薬で血圧上昇も
日本人の最大の死因はがんで、1980年代以降変わっていない。厚生労働省の調査(2022年)によると、2位は心臓病、3位は老衰、4位は脳卒中だった。
「がんの予後が改善するに伴い、心血管病を発症するがん患者が増え、臨床の場でもその対応が課題になっています。がんの種類によっては、がんで亡くなるよりも心血管病で亡くなる人の方が多いとの報告もあります」
がんの治療薬が悪影響を及ぼすこともあるという。「一部の抗がん剤の副作用で心臓が障害されることは以前から知られています。最近は、急速に増えつつある分子標的薬の中に、血圧を上げるものがあることが分かっています」
このように、がんと心血管病との関連が明らかになっているが、がん患者の血圧と心血管病リスクの関係を調べた研究はほとんどなかった。
そこで金子講師ら東大などの共同研究グループは、2005年1月~20年4月に日本人の大規模データベースに登録されたがん患者3万3991人を対象に、血圧値と心血管病(心不全、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心房細動)のリスクを検討した。
その結果、平均2.6年間の観察期間中に779人が心不全を発症した。発症リスクは、正常血圧(最高血圧120mmHg未満かつ最低血圧80mmHg未満)に比べ、高血圧の一歩手前の段階である高値血圧(同130~139mmHg、同80~89mmHg)のリスクは1.24倍、高血圧(同140mmHg以上、同90mmHg以上)では1.99倍と、高値であるほど、また軽度上昇した段階から高くなることが分かった。心筋梗塞、狭心症、脳卒中、心房細動でも同様の結果だった。
金子講師は「がん患者も一般の人と同じく、血圧がやや上昇した段階から心血管病のリスクが高まることが確かめられました。患者さんには血圧にも注意を払っていただき、高めの方は主治医に相談してください」と呼び掛けている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/11/14 05:00)
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