うま味を活用して減塩
~おいしさ損なわず(東京大学大学院 野村周平特任助教)~
「塩分の取り過ぎは良くないが、薄味だとおいしくないので続かない」―。そのような思いを覆すとされるのが、コンブなどから得られる「うま味」で、おいしさを損なわずに減塩できるという。うま味を活用した減塩食品について、東京大学大学院医学系研究科の野村周平特任助教に話を聞いた。
日本人全体の1日当たり食塩摂取量の分布
◇英政府の減塩対策
脳卒中、心臓病などの心血管病を引き起こす高血圧。さまざまな生活習慣が高血圧をもたらすが、要因の一つに塩分の過剰摂取がある。過剰摂取が血圧の上昇をもたらし、減塩で降圧が進むことが多くの研究で示されている。
野村助教によれば、英国政府は2003年、パンなどの食塩使用量を徐々に減らすよう食品業界に呼び掛けた結果、8年後にパンの食塩濃度は約20%低下し、国民の食塩摂取量を約15%減らすことができた。さらに血圧も低下し、心血管病による死亡率は約4割減少した。
◇13~22%の減塩可能に
日本でも減塩の取り組みは進められてきた。ただし、1日の食塩摂取量の平均値(19年)は、男性が約11グラム、女性が約9グラムで、厚生労働省の摂取基準である男性7.5グラム未満、女性6.5グラム未満を上回っている。
こうした中、対策の一つとして注目されるのがうま味の活用だ。野村助教らは、うま味を用いた減塩食品が流通する食品の100%を占めた場合を想定し、食塩摂取量を算出した。
その結果、成人の1日当たりの食塩摂取量は平均7.7~8.7グラムと推算された。これは16年の男女平均10.0グラムに比べ1.3~2.2グラム少なく、12.8~22.3%の減塩に相当する。「28.7%に留まっていた食塩摂取量の平均8グラム未満の割合(16年)も、43.4~59.7%に上がります。食品業界や関連する機関が協力して減塩食品の開発、普及を進めることが望まれます」と野村助教は強調している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/10/29 05:00)
【関連記事】