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自動体外式除細動器(AED)は心停止した人の蘇生に用いる医療機器だ。日本では2004年7月から一般市民も使えるようになり、駅や行政施設などさまざまな場所に約65万台(19年時点)が設置されているが、実際に使用されるケースは少ないという。
東京慈恵会医科大学付属病院救急部の武田聡診療部長は「AEDで救える命は多いので、ちゅうちょせず使ってほしい」と話す。
ためらわずAEDを
◇使用率4.1%
心臓突然死の原因の多くは心室細動という重篤な不整脈で、心臓がけいれんを起こして血液を全身に送り出せなくなる状態を指す。AEDは心室細動を起こした心臓に電気ショックを与えて除細動し、正常なリズムに戻すための医療機器だ。
消防庁によると、21年に心臓の異常が原因で心停止になり救急搬送された12万9144人のうち、周囲に市民が居合わせたケースは2万6500人だった。このうち1万5225人(57・5%)が居合わせた人から心肺蘇生を受けたが、AEDが使われたケースはわずか1096人(4.1%)だった。
119番通報をしてから救急車が到着するまでに平均9.4分かかり、電気ショックが行われるまでの時間が1分遅くなるごとに救命率は7~10%ずつ低下し、10分を超えると極めて厳しい状況になるという。
「一般市民が心肺蘇生をすると、1カ月後の社会復帰率は何もしなかった場合と比べて約3倍、AEDによる除細動を組み合わせると10倍以上高まります」
AEDの使用率が低い理由は「設置場所の周知が徹底されていない」「使用経験が無い」などがあるという。また、女性が倒れた場合、居合わせた人が体に触れることをちゅうちょして救命処置が遅れる傾向があるという。「AEDのパッドを素肌に貼れるようなら衣服を完全に脱がす必要はありません。肌の露出が気になるようなら上着やタオルを掛けるようにしてあげてください。一刻を争う状態ですから、AEDの使用をためらわないで」
◇「死戦期呼吸」に注意
AEDの操作は、電源を入れたら音声指示に従うだけで、とても簡単だ。指示された箇所にパッドを貼ると、電気ショックが必要な状態か機械が自動で判断する。指示があれば、ショックボタンを押す。
「倒れた直後にあえぐようにゆっくり呼吸しているように見えるケースがありますが、これは死戦期呼吸といって心停止のサインです。直ちにAEDを活用した心肺蘇生を試みる必要があります」と武田診療部長は呼び掛けている。
最寄りの設置場所は、日本AED財団のマップ(aed―navi.jp)などで探せる。また、使用方法の講習会が地域の消防署などで行われている他、同財団がオンラインで開催している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2023/11/19 05:00)
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