2024/10/28 05:00
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~治療の遅れは致命的~
私は糖尿病のある方の診察をする際に、「眼科は受診していますか?」と必ず聞きます。すると、半分くらいの方は「なぜ眼科?」と不思議そうな顔をされます。私たち医療スタッフの力不足もあり、糖尿病が失明の原因となる網膜症を引き起こすことはあまり知られていないようです。
2020年に日本糖尿病眼学会が発表した糖尿病網膜症ガイドラインでも「糖尿病発症時に1回、その後最低でも年に1回は眼科を受診するべきだ」とされていますが、眼科を受診している糖尿病患者は約47%(※1)であり、まだまだ周知が不十分だと言えます。
目に自覚症状が出たときは糖尿病網膜症がかなり進んでいます
◇視力低下や失明の恐れ
糖尿病網膜症は、糖尿病腎症、糖尿病神経障害と並ぶ、糖尿病の三大合併症の一つです。
網膜は光や色を感じる役割を持っており、その上には毛細血管が張り巡らされています。高血糖が持続すると、血管がむしばまれ、網膜の隅々まで酸素や栄養が届かなくなります。すると、私たちの体は代償的に血管を生やして栄養不足を解消しようとするのですが、新しく生えた血管はもろく、容易に出血を起こします。そして、出血後にできたかさぶたのようなものが網膜を引っ張ると網膜剥離が起き、視力低下や失明につながるのです。
糖尿病網膜症には、残念ながら元に戻す治療はありませんが、レーザー治療で進行を遅らせることができます。早期発見・早期治療のために、眼科の定期受診は必須です。
◇受診時の注意点
眼科受診について知っておいてほしいことは二つです。
一つ目は「定期的な受診を欠かさない」ことです。視力低下が出現する頃には、網膜症は相当進行しています。小さな出血が起きていたり、毛細血管が閉塞(へいそく)したりしていても、自覚症状はほとんどなく、検査を受けなければ発症の有無は分かりません。糖尿病と診断されたことがあるならば、最低1年に1回は眼科を受診し、眼底検査を受けるべきだとされています。受診間隔は重症度に合わせて調整されるので、眼科の主治医の指示に従って定期的に受診しましょう。
二つ目は「受診時はタクシーや公共交通機関を使用して」ということです。眼科では網膜を十分に観察するために、瞳孔を開く目薬を使用します。検査後4~5時間程度は目のピントが合わなくなるので、車などの運転はできません。
糖尿病患者さんにとって、眼科の定期受診による網膜症の早期発見は、失明予防のために非常に重要です。自身の健康と暮らしをより良く保つために、ぜひ受診をお願いします。(了)
(※1)Patient referral flow between physician and ophthalmologist visits for diabetic retinopathy screening among Japanese patients with diabetes: A retrospective cross-sectional cohort study using the National Database. Noriko Ihana-Sugiyama et al. J Diabetes Investig. 2023 Jul
渡邉昂汰氏
渡邉 昂汰(わたなべ・こーた) 内科専攻医および名古屋市立大学公衆衛生教室研究員。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。
(2023/12/27 05:00)
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