新米医師こーたの駆け出しクリニック
突然ですが、カンピロバクター食中毒になりました 専攻医・渡邉 昂汰
先日、学会のため出張した時の話です。学会終了後に友人と、「火入れが絶妙だ」とうわさの焼き鳥屋さんに足を運びました。価格設定は少々高めでしたが、どの品も大変美味で、特に白レバー焼きが絶品でした。店主さんいわく、「うちは開店の4時間前にさばいているから、新鮮な鳥が味わえる」とのことでした。
幸せな気持ちで名古屋に帰ったのですが、その4日後に38度の発熱があり、6日後には水様性の下痢と血便が出現しました。友人にも同様の症状が出たため、病院を受診したところ、カンピロバクター食中毒と診断されました。
鶏肉を生で食べたり、加熱が不十分だったりすると、カンピロバクター食中毒の危険性があります
◇鶏肉由来が多く
この病気はウシ、ヒツジ、ニワトリなどの腸管内に広く生息している、らせん状の常在菌「カンピロバクター」によって起こります。日本では鶏刺しや鶏のたたきなど生の鶏肉料理や、鶏肉や鶏レバーを使用した加熱不足の調理品が原因食品として多く報告されています。
一般的な細菌における感染成立の個数は10万~100万個であるのに対し、カンピロバクターは数百個程度と少量で感染が成立し、2〜5日という比較的長い潜伏期間の後に、発熱、嘔吐(おうと)、水様性下痢、血便などの症状が出ます。経過は基本的には良好で、自然治癒することがほとんどです。高齢者や基礎疾患のある方以外は、抗菌薬を使う必要はありません。
◇恐ろしい合併症
ただ、引き続いて起こる可能性のある「ギラン・バレー症候群」には注意が必要です。急速に進行する神経障害で、カンピロバクター感染から1~3週間後に手足の筋力低下やしびれが現れます。発症頻度は0.1%とまれですが、重症例になると、呼吸筋のまひによる呼吸困難や、自律神経障害による重度の血圧変動が見られ、生命に関わる場合もあります。幸い、私はギラン・バレー症候群を発症しませんでしたが、3週間ほど不安な気持ちで過ごす羽目になりました。
鶏の生食を巡ってはさまざまな文化や考え方がありますが、医師としては「中まで十分に火が通ったものだけを食べる」よう推奨します。また、カンピロバクターを完全に死滅させるには、中心部までしっかり火を通す必要があります。見た目からは十分に加熱されているかどうかは分かりませんので、鶏肉を提供する飲食店の皆さまにおかれましては、いま一度、食品衛生にご注意いただければと存じます。(了)
渡邉昂汰氏
渡邉 昂汰(わたなべ・こーた) 内科専攻医および名古屋市立大学公衆衛生教室研究員。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。
(2023/11/29 05:00)
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