Dr.純子のメディカルサロン

被災した友人・知人にどう声を掛ける?

 能登半島地震の被災地に住む友人が心配で連絡を取りたいが、どんな声を掛けたらいいのか分からない―。こんな悩みを持つ方がいらっしゃると思います。ご家族が無事かどうかや被害状況がはっきりしない中、不用意な言葉でかえって嫌な気分にさせてしまうのも心配です。相手を不快にしたり傷付けたりしない伝え方ついて考えてみたいと思います。

(文 海原純子)

被災者のために用意された避難所(11日、金沢市)

 ◇「頑張って」のニュアンスの伝わり方

 「頑張って」は、ぎりぎりまで頑張っている人にとっては言われたくない言葉だとされています。ただ、相手との距離感や親密度で捉え方は変わってきます。「もっと頑張れ」というニュアンスではなく「気を付けて元気でいてほしい」というニュアンスで相手に伝われば問題ないのですが、そうした気持ちを伝えたいなら「大変だと思うけど元気でいてね」と言い換えてもいいかもしれません。今回の地震のような大きなストレスを受けた後は気持ちも不安定で、思わず発した一言が相手を傷付けたりすることもあります。

 ◇You messageとI messageでこんなに違う

 一つ気にしていただきたいことは、You message(ユー・メッセージ)とⅠmessage(アイ・メッセージ)の違いです。I messageは自分を、You message は相手を主語にした話し方で、後者の場合は相手に命令・指示するニュアンスになります。例えば、「命が助かってよかったじゃない」と言うのは「命が助かってよかったと思いなさい」と指示するような意味合いがあり、相手は不快な気持ちになります。「私は、あなたの命が助かってよかったと思った」とI messageの形にすれば、違うニュアンスで伝わります。

 ◇話の無理強いは危険

 被害の状況をあれこれ聞くのは相手の負担になるので控えてほしいと思います。「つらい気持ちを話すのがいい」と言いますが、大きなショックを受けたときは誰にも話したくない場合があるのです。話したいときに話せる環境が大事で、無理に話をさせようと声を掛けるのはかえって心の傷を広げることになります。

 ◇「どうしてそんな所に住むのか」と言われ

 東日本大震災の時、津波で家や自営業の仕事場を失った岩手県陸前高田市にお住まいの方に、どんな声を掛けられるのが嫌だったか聞いてみました。「嫌な声掛けというのはなかった」とする半面、「三陸の海岸の危ない場所にどうして住み続けるのか」と言われた時、悲しい気分になったとおっしゃっていました。その方は先祖代々、同市に住んで海の仕事をしており、今は高台に移って仕事を再開しているそうです。地震が続いていた能登半島ですから、今回もこうした不用意な言葉を耳にする機会がありそうです。これはやめてほしいと思います。

 ◇今も保存している手紙や送付状

 その方はまた、助かった・力になったこととして、避難所への全国からの支援を挙げていました。1000人ほどが身を寄せる避難所で支援の中心として活動したため、全国から衣服などが宅配便で送られてきたのを目の当たりにしたそうです。「会ったことのない人たちから、たくさんのお手紙ももらった」と、大量の荷物の送り状や手紙の束の写真を見せてくれました。およそ13年間にわたり大事に保管された手紙や送付状は、見知らぬ人たちからの支援がどんなに大事かを伝えてくれていました。

 そうした体験をした方たちが、今度は能登半島地震で支援する側に回っています。同じ経験を持つ人たちからの声掛けは被災者の手助けになるのではないでしょうか。

 ◇支援者同士の会話も

 別の東日本大震災の被災者にも話を聞きました。この方も地元で被災しながら支援をしていましたが、毎日忙しい中、一緒に支援している仲間と「ちょっとここで休憩しよう」「ここらでお茶を飲もう」と声を掛け合ったのが助けになったと言います。被災しながらも支援活動に携わっている自治体職員や医療関係者らも多いとされています。自分自身が過剰適応して燃え尽きたり体調不良になったりしないように、仲間同士で声を掛け合ってほしいと思います。(了)

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