治療・予防

援助者のストレス
~心のSOSに気付いて―共感疲労(北参道こころの診療所 庄司剛院長)~

 医療や介護など対人援助に携わる人が、心的外傷(トラウマ)を受けた患者の話を聞きケアをすることで、自分も心が苦しくなって疲れてしまう。こうした心理状態を「共感疲労」と呼ぶ。

 北参道こころの診療所(東京都渋谷区)の庄司剛院長は「共感疲労がひどくなると、不眠や食欲不振動悸(どうき)など心のSOSともいうべき症状が表れます」と話す。

さまざまな症状が表れる共感疲労

さまざまな症状が表れる共感疲労

 ◇不眠や抑うつ症状も

 看護師や介護職などは、自分の感情をコントロールし共感することがスキルとして求められる。「共感疲労には、ショックや恐怖、虐待などを受けたトラウマ体験を患者さんから聞いて、自分事のように感じてしまう、いわゆる『二次的なトラウマ』に加えて、やる気を失う『バーンアウト(燃え尽き症候群)』がしばしば関係します。どれだけケアをしても患者さんは良くならないなど、無力感に襲われるような状況で、共感疲労から回復できなくなってしまうのです」と庄司院長。

 共感疲労が限界を越えると、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と似たような症状や、抑うつ症状が起こる可能性がある。「不安や不眠、食欲不振動悸(どうき)頭痛、物音などに過敏になる過覚醒、気分の落ち込みや意欲低下など、人によって症状はさまざまです」

 ◇話すことで癒やされる

 医療職や介護職ばかりではない。戦争や被災地に関する報道に接することで、共感疲労と同じような現象が一般の人にも起こるとの見方がある。「悲惨な映像を見て、自分と似た境遇の人々であればなおさら心が苦しくなることがあると思います。つらい場合は無理をせず、ニュースを見る機会を減らすとよいでしょう」

 共感疲労を防ぐには、運動や休息、リラクセーションなどの一般的なストレス対処法が役立つ。「誰かに話すことが癒やしになります。対人援助者には、気持ちを正直に話せる家族や仲間がいること、情緒的な問題を含めて支え合える場が職場にあることが大切です」と庄司院長はアドバイスする。

 「不眠や食欲不振などが数日で回復しないときは、心のSOSと受け止め、心療内科や精神科を早めに受診することを勧めます。医療機関ではストレスの原因を探り、症状に応じて検査や治療を行います」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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