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国内外でトコジラミの被害が相次いでいる。兵庫医科大学病院(兵庫県西宮市)皮膚科の外来診療でもコロナ禍の3年間を除き、2010年ごろから右肩上がりで件数が増えているという。
原因は「世界規模でヒト・モノが移動している点と、安全性の高さから広く使われてきたピレスロイド系殺虫剤に抵抗性を有するトコジラミがまん延している点などが考えられます」と同科の夏秋優教授は話す。
トコジラミに刺された足
◇うそ寝作戦で捕獲
通常は、初めて刺された人には症状は出ない。何度か刺されるとトコジラミが皮膚に注入する唾液腺物質に対してアレルギー反応が起き、肌のかゆみや赤みが表れるようになる。症状が軽ければ市販の虫刺され用塗り薬で治まるが、毎晩刺されたり、広範囲に刺されたりしてかゆみが強く、眠れない場合やひどく腫れている場合は、皮膚科を受診するとよい。
夏秋教授の診察では、何に刺されたのかと相談する人が多いという。「刺された部位や広がり方、旅行経験などからトコジラミだと推定はできますが、皮膚症状はイエダニやノミなどの虫刺されとあまり変わりません。確定のために、トコジラミをポリ袋に捕獲して持って来るよう患者さんにお願いしています」。セロハンテープで貼り付けて捕まえる方法でもよい。
トコジラミは扁平(へんぺい)な形だ。幼虫は1~3ミリメートルで乳白色から黄土色、成虫は約5ミリメートルで茶色と成長につれて色が変化する。昼間は室内の壁、柱、畳、カーテン、ベッドの隙間などに潜み、暗くなると出て来て、就寝する人の露出した皮膚を刺す。このため捕獲には「うそ寝作戦」が有効で、暗くした部屋で30分間ほど横になり、吸血のために出てきた頃に照明をつけて捕まえるとよいという。
◇持ち帰らない対策を
駆除には、専用の殺虫剤を使う。プロポクスルまたはメトキサジアゾン、ブロフラニリドといった成分を含むものが有効。スプレータイプのものは、トコジラミが生息したり通ったりしそうな場所に噴霧して駆除する。薫煙タイプは、室内に有効成分を充満させて駆除する。駆除が困難な場合は、専門業者に依頼する。
そして旅先などからトコジラミを持ち帰らないための対策が大切だ。宿泊施設のグレードにかかわらず、トコジラミがいる可能性はある。旅行の際は荷物が入る大きなポリ袋を持参し、就寝時に衣類やバッグ、スーツケースを入れ、ベッドや寝室から最も遠い場所に置くとよい。袋が無い場合は、洗面所に荷物を置いてそこだけは電気を消さずに寝る。
「トコジラミは感染症を媒介しないとされる点で安心ですが、まん延させないために、刺されることより持ち帰ることを警戒してください」と夏秋教授はアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/06/04 05:00)
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