新米医師こーたの駆け出しクリニック

50歳以上は帯状疱疹ワクチンの接種を 専攻医・渡邉 昂汰

 ワクチンにより予防できる疾患の一つに帯状疱疹(ほうしん)があります。しかし、「値段が高くて、帯状疱疹ワクチンを打つのをやめてしまいました」とおっしゃる患者さんをたくさん診てきました。現在最も効果的とされているワクチンは2回接種のシングリックスですが、地方自治体の助成がない方だと総額4万円ほどかかります。それでも、「とてもコスパが良い」と私は感じているので、ぜひ接種を勧めたいと思っています。

帯状疱疹になると、長期にわたり神経痛が残ってしまう懸念などもあります。予防がとても大切です

帯状疱疹になると、長期にわたり神経痛が残ってしまう懸念などもあります。予防がとても大切です

 ◇赤い発疹と激しい痛み

 帯状疱疹とは体の片側に赤い発疹ができ、ピリピリとした痛みが出る疾患です。痛みは日ごとに悪化していき、眠れないほど激しくなることもあります。

 原因は、水ぼうそうと同じ「水痘帯状疱疹ウイルス」で、日本人の90%以上が感染していると言われています。水ぼうそうが治った後も、症状のない状態でウイルスが体に潜み続けており、疲労やストレスで免疫機能が低下すると発症します。50歳以降に発症率が高くなり、80歳までに3人に1人が発症するため、罹患(りかん)率がとても高い疾患だと言えます。

 ◇怖い合併症

 帯状疱疹を発症してしまった方には、ウイルスをやっつける抗ウイルス薬が処方されます。「薬で治るなら、わざわざ高いワクチンを打って予防する必要はないんじゃないか」と思われるかもしれませんが、これは大きな間違いです。なぜなら帯状疱疹は、治療をしても失明、顔面まひ、難聴などの後遺症が懸念される疾患だからです。

 また、帯状疱疹後神経痛といって、長期的に痛みが残ってしまう方もしばしばいらっしゃいます。私の担当した患者さんは、「焼けるような痛みが続くんです」と、とてもつらそうでした。この神経痛は、50歳以上で帯状疱疹になった人の2割が発症すると言われています。神経痛を和らげる薬もありますが、完全に痛みをなくすことは困難です。また、神経痛を和らげる薬の副作用にはめまいやふらつきがあり、転倒による骨折や外傷性くも膜下出血の原因にもなり得ます。

 ◇高い予防効果

 帯状疱疹がただの皮膚疾患ではないことはご理解いただけたかと思います。発症してしまう前に、ワクチンで予防することが最もローリスクなのです。

 シングリックスは帯状疱疹の発症予防効果が50歳以上で97.2%、70歳以上で89.8%、帯状疱疹後神経痛の予防についても、50歳以上で100%、70歳以上で85.5%と高い有効性が認められています。1度帯状疱疹になったことがある人にも効果があります。費用以上の価値が必ずあるので、まだ打っていない方は、ぜひお近くの内科もしくは皮膚科などで相談をしていただければと思います。(了)

渡邉昂汰氏

渡邉昂汰氏


 渡邉 昂汰(わたなべ・こーた) 内科専攻医および名古屋市立大学公衆衛生教室研究員。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。

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