治療・予防

腸内細菌が動脈硬化と関連
~冠動脈疾患発症前から菌の割合が変化(滋賀医科大学 岡見雪子特任助教)~

 腸内細菌は、健康に良い働きをすることもあれば、さまざまな病気の発症に関わることもある。心臓周囲の動脈(冠動脈)の硬化によって起こる冠動脈疾患では、発症前から、動脈硬化が進むにつれて一部の腸内細菌の割合が変化することが分かった。研究を行った滋賀医科大学NCD疫学研究センター(大津市)の岡見雪子特任助教に聞いた。

CACスコア別のグループ菌の割合

 ◇石灰化スコアを算出

 岡見助教らは、滋賀県草津市に住む男性663人(46~83歳)を対象に、心筋梗塞、狭心症などの冠動脈疾患にかかったことがあるか調査し、CT画像から冠動脈の動脈硬化指標である「冠動脈石灰化(CAC)スコア」を算出。それと共に便に含まれる腸内細菌の種類と割合を分析した。

 冠動脈疾患の既往が「なし」の612人について▽CACスコアがゼロで動脈硬化が起きていないと考えられる219人▽CACスコアが100未満で動脈硬化が軽度とみられる200人▽CACスコアが100以上で動脈硬化が中等度以上とされる193人に分けた。冠動脈疾患既往「あり」を含めた4群の腸内細菌の割合を比較した。

 ◇腸内細菌の変化を目印に

 分析の結果、CACスコアが高い、つまり動脈硬化が進んでいる人ほど「バチロータ」というグループの菌の割合が高く、「バクテロイドータ」というグループ菌の割合は低かった。CACスコアが高い人ほど、バクテロイドータグループ菌に対するバチロータグループ菌の構成比率も高く、これは肥満糖尿病の患者でも同様の傾向が知られている。冠動脈疾患既往「あり」の人で最も高くなることも分かった。

 バチロータグループ菌の一種「ラクトバチルス菌」の割合は、CACスコアが高い人ほど高い傾向が見られ、特に冠動脈疾患既往「あり」の人で高かった。

 冠動脈疾患の発症前に「腸内細菌の変化をマーカー(目印)として、冠動脈疾患の高リスク群を見つけ、予防策を探れる可能性が示されました」。

 その上で、岡見助教は「ラクトバチルス菌には、乳酸菌としてヨーグルトや発酵食品に用いられる、いわゆる『善玉菌』が含まれますが、今回の結果から全てのラクトバチルス菌が『善玉菌』ではない可能性も示されました」と話している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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