2024/12/06 17:18
キャラクター活用による病院内での心地よい空間づくりの取り組み
東京慈恵会科大学皮膚科学講座の延山嘉眞教授らの研究グループは、足白癬 *1(あしはくせん・水虫)が足の裏のメラノーマ(悪性黒色腫*2 、メラノサイトのがん)の発生に相関があることを発見しました。
これまで足底の悪性黒色腫の発生には物理的な刺激との相関が想定されていましたが、今回の研究により、初めて足白癬との相関を発見しました。この発見により、足白癬の治療や予防がこれまで困難とされてきた足底に発生する悪性黒色腫の予防につながることが期待できます。
足底の悪性黒色腫を有する患者30例(悪性黒色腫グループ)、および、足底の悪性黒色腫以外の皮膚病変を有する患者84例(非悪性黒色腫グループ)を調べて判明しました。これらの患者の足底を顕微鏡で検査した結果、悪性黒色腫グループでは60.0%、非悪性黒色腫グループでは29.8%が足白癬に罹患していることが分かりました。非悪性黒色腫グループは足白癬の症状があるため受診した患者を含んでいるにもかかわらず、悪性黒色腫グループのほうが高確率で足白癬に罹患していました(統計学的有意差あり:オッズ比3.540、P = 0.003、Pearsonのカイ二乗検定*3 )。この結果は白癬が足底悪性黒色腫の発生に関与している可能性を示しています。
今後は、白癬と発がんの関連を分子レベルで解明したいと考えています。
本研究の成果は、2024年5月6日に国際学術雑誌であるJournal of Dermatology誌に発表されました。
メンバー:
・東京慈恵会医科大学 皮膚科学講座 助教 脇裕磨
・東京慈恵会医科大学 皮膚科学講座 教授 延山嘉眞
・東京慈恵会医科大学 皮膚科学講座 名誉教授 中川秀己
・東京慈恵会医科大学 皮膚科学講座 講座担当教授 朝比奈昭彦
研究の詳細
1.背景
メラノーマ(悪性黒色腫)はメラノサイトのがんであり、進行例は高い致死率を有します。日本人では足底に発生するタイプが一番多いことが知られています。現在まで、足底の悪性黒色腫の発生には物理的刺激との相関が想定されていましたが、例えば陸上アスリートに発生しやすいという報告はないことから、この想定に疑問を持っていました。一方、ヘリコバクター・ピロリ菌の胃への慢性感染症は胃癌を引き起こすことが知られています。同様に、白癬菌の慢性感染症である足白癬によりがんが発生する可能性があると考えました。そこで、白癬と足底悪性黒色腫の関係を調査することにしました。
2.手法
足底の悪性黒色腫を有する患者30例(悪性黒色腫グループ)、および、足底の悪性黒色腫以外の皮膚病変を有する患者84例(非悪性黒色腫グループ)(注)を調査対象としました。これらの患者の足底を顕微鏡で検査し、白癬菌が検出された場合、足白癬と診断しました。
(注):足白癬が疑われて受診した患者を含む
3.成果
悪性黒色腫グループでは60.0%、非悪性黒色腫グループでは29.8%が足白癬を罹患していました。非悪性黒色腫グループには足白癬の症状があるため受診した患者を含んでいるにもかかわらず、悪性黒色腫グループのほうが高確率に足白癬を罹患していることが分かりました(統計学的有意差あり:オッズ比3.540、P = 0.003、Pearsonのカイ二乗検定)。さらに、性別、body mass index*4 、糖尿病、足白癬をパラメーターとした多変量解析を行いました。この解析でも、足白癬が足底悪性黒色腫と相関していることが示されました(統計学的有意差あり:オッズ比4.285、P = 0.002、ロジスティック回帰分析*5 )。これらの結果により、足白癬が足底悪性黒色腫の発生に関与している可能性が示されました。
足白癬を治療あるいは予防することにより、これまで困難とされてきた足底に発生する悪性黒色腫の予防が期待できます。
4.今後の展開
この結果について、足底悪性黒色腫の予防のために広く国内外に啓蒙する予定です。同時に、白癬と発がんの関連を分子レベルで解明したいと考えています。
5.用語の説明
*2 悪性黒色腫:メラノサイトのがん。進行すると致死率が高い。足底に発生した場合、「ほくろ」との区別が問題になる。
*3 Pearsonのカイ二乗検定:単一の変量を解析する統計学的解析の一種。
*4 Body mass index:[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で算出される値。足底への物理的外力の参考値として解析対象にした。
*5 ロジスティック回帰分析:複数の変量を解析する統計学的解析の一種。
(2024/05/16 15:44)
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