治療・予防

急性硬膜外血腫
~直後に意識あっても注意(水戸済生会総合病院 井口雅博主任部長)~

 転倒や交通事故などで頭部を強く打って発症する急性硬膜外血腫は、脳を覆っている硬膜と頭蓋骨の間で出血して血液がたまる外傷だ。出血量が多く重症であれば命に関わる例もある。

 水戸済生会総合病院(茨城県水戸市)脳神経外科の井口雅博主任部長は「頭部を強打後に意識がはっきりしていても時間がたって状態が悪化することがあるので注意が必要です」と話す。

硬膜と頭蓋骨の間に血腫ができる急性硬膜外血腫

 ◇3~6時間後に症状も

 頭蓋骨と脳の間には内側から軟膜、くも膜、硬膜の3層の膜があり、脳を守っている。硬膜は他の二つの膜より厚くて丈夫にできている。

 硬膜の表面には硬膜動脈や硬膜静脈が走っていて、頭蓋骨骨折など頭部外傷に伴いこれらの血管が破れ出血して急性硬膜外血腫に至る。

 井口主任部長によると、急性硬膜外血腫は発症後の経過に特徴があるという。硬膜とくも膜の間(硬膜下腔)で出血する急性硬膜下血腫や、脳挫傷を伴うときは、受傷直後から意識障害や半身まひなどが見られる。一方で、急性硬膜外血腫は頭部を打って一時的に脳振とうなどを起こしても脳に損傷がなければ意識がすぐ戻って、自覚症状もあまり感じないときがある。

 「しかし、受傷後3~6時間の間に血腫が大きくなり脳が圧迫されると、頭痛吐き気、意識障害、まひなどの症状が表れます。さらに脳の中心部にある脳幹が圧迫され左右の瞳孔の大きさが変わってくると、危険な状態です」

 ◇CT検査できる病院へ

 急性硬膜外血腫の診断は頭部CT検査で骨折出血の場所、血腫の大きさなどを調べて行う。

 治療は、出血が少量で意識障害などがなければ、3時間程度おきにCT検査を繰り返して出血の様子を観察する。意識障害、まひなどの神経症状が進行していたり、血腫が大きかったりすれば手術で止血の処置をして血腫を取り除く。

 「頭を打って意識障害、まひがある場合や、意識がはっきりしていても後から頭痛吐き気などが生じた場合は脳神経外科や、CT検査ができる医療機関をすぐに受診しましょう。予防として、自転車に乗る際はヘルメットを着用したり、家の中で転倒・転落しないように整理整頓したりするなど、頭にけがをしないような心掛けが大切です」と井口主任部長は助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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