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炎症性腸疾患(IBD)は腸管に炎症が起こる病気の総称で、一般に潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)を指す。10~30歳代での発症が多く、治療と学業や仕事の両立に悩む患者も。
北里大学北里研究所病院(東京都港区)炎症性腸疾患先進治療センター長の小林拓医師は「IBD治療は進歩しており、患者さんの多くは治療の継続によって良好な状態を維持して働き続けることが可能です」と話す。
北里大学北里研究所病院におけるUC患者の年齢分布
◇職場の理解と配慮を
IBD患者数は1980年代頃から急増し、2014年時点で約29万人以上と推定される。UCは直腸から上方向に炎症が広がり、CDは小腸を中心に大腸などにも炎症が散在する。「IBDでは、腹痛や下痢、血便などの症状が治まる『寛解』とぶり返す『再燃』を繰り返しながら慢性に移行します。UCでは急激な便意を感じる便意切迫感も多く見られ、トイレに間に合うか不安が付きまといます」
IBDは原因不明で根治療法がなく、長期療養を必要とするため、国の難病医療費助成制度の対象(指定難病、原則軽症者を除く)となっている。「IBD患者さんは働き盛りの世代が多く、治療と仕事を両立できる環境整備が重要です」
具体的には、通院や体調が悪化した場合の業務調整などについて、職場の理解と配慮を得ておきたい。「難病だから働けないなどの偏見をなくすためにも、体調が良い時に、まずは職場で信頼できる人に病気について伝えておくとよいでしょう」
◇病院で気軽に相談
IBDの治療は、炎症を抑える飲み薬や注射薬が中心で、入院や手術が必要な重症患者は減っている。ただ、外見からは病気かどうかが分からないため上司にIBDだと伝えられず、仕事を休めずに通院や服薬を中断して悪化し、入院に至るケースは少なくないという。「職場への病気の伝え方、IBDの症状やトイレへの不安などの悩みは、主治医やソーシャルワーカーなどに気軽に相談してほしい」
また、指定難病などの患者が仕事と治療の両立支援を必要としている場合、患者と事業主が作成した勤務情報に基づき、主治医がその事業所の産業医などに対し、患者の就労上の配慮に関する意見などの情報提供を行う制度(療養・就労両立支援)を健康保険で利用できる。
小林医師は「仕事とIBD治療の両立は、患者さんの幸せのために医療者が関わるべき問題でもあるので、遠慮なく相談しましょう」と助言している。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2024/11/05 05:00)
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