治療・予防

子どもの炎症性腸疾患
~症状落ち着けば留学も可能(大阪医科薬科大学小児科 余田篤医師)~

 炎症性腸疾患(IBD)は腸を中心とする消化管に炎症が生じる疾患の総称で、患者の20~25%が18歳未満だ。大阪医科薬科大学(大阪府高槻市)小児科功労教授の余田篤医師は「子どもは大人よりも重症度が高く、関節炎、不明熱、低身長や二次性徴が遅れるなど消化管に関連しない(消化管外)症状も見られます」と話す。

潰瘍性大腸炎とクローン病では炎症が起こる部位が異なる

潰瘍性大腸炎とクローン病では炎症が起こる部位が異なる

 内視鏡検査は必須

 IBDは一般的には潰瘍性大腸炎(UC)とクローン病(CD)の二つを指し、発症のピークは10~20代だが、乳幼児から小学校低学年でも見られる。遺伝のほか食生活や衛生環境などの因子が重なり、体の免疫が異常を来して発症する。

 そのうち、UCは大腸のみに炎症が生じ、病変は肛門側から結腸側へ向かって連続的に広がる。CDは口から肛門までの全消化管に炎症が非連続的に多発する。

 症状は二つの疾患の種類や発症部位、重症度によって異なるが、腹痛、下痢、血便などの下部消化器症状は同じだ。消化管以外の症状はCDで頻度が高く、子どもでは先行することもある。また、子どものCDは大人より肛門部の病変が多い。余田医師らは診察に当たって女児の場合には女性医師か、男性医師なら女性看護師同伴で診るという。

 確定診断には、UCでは下部消化管の内視鏡検査、CDでは上部と下部消化管内視鏡検査と小腸のカプセル内視鏡検査が必須となる。

 ▽寛解期は留学も可

 IBDは、炎症で症状が表れる活動期と症状が落ち着く寛解期を繰り返す。治療は炎症を抑える寛解導入療法と炎症が治まった状態を維持する寛解維持療法に大別され、長期にわたる。薬物療法が基本だが、コントロールできなければ手術が必要となる。

 子どもは重症化しやすく、成長障害にも配慮する必要があるため、活動期には大人よりも積極的に治療し、並行して栄養療法を行う。活動期は入院か1~2週間に1度の通院が必要だが、寛解期は2~3カ月に1度の通院で済む場合もある。

 余田医師は「寛解期なら、海外への修学旅行や留学も可能です。主治医に自分のやりたいことや時期などを具体的に伝え、その時にベストな状態でいられるように工夫してください」とアドバイスしている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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