新米医師こーたの駆け出しクリニック

事前採血の勧め 専攻医・渡邉昂汰

 総合病院への意見・要望で多いものの一つが、待ち時間の長さに関するものです。予約を詰め込まざるを得ない国民皆保険システムや、急患や重症患者の発生などによるところも大きく、どうしようもない部分もあるのが正直なところですが、待ち時間に憤る患者さんの気持ちもとてもよく分かります。

 われわれも待ち時間を短縮すべく日々努力していますが、患者さん側にも実はできることがあります。それが「事前採血」です。

総合病院では患者の待ち時間が長い場合が少なくない

 ◇院内滞在時間を短縮

 事前採血とは受診日よりも前に血液検査や尿検査を済ませておくことで、おおむね1週間前〜前日に実施します。受診日当日にはすでに検査結果が出そろっている状態なので、医師は患者さんをすぐに診察室に呼べます。

 特に朝一番の予約枠はお勧めです。当日採血の患者さんの検査結果はまだ出ておらず、この時間に診察できるのは事前採血の方だけです。急患や当日予約、他科からの診察依頼などのイレギュラーな事態もまだ発生していないことがほとんどなので、一番に呼ばれて最速で帰れます。

 ◇質の高い医療可能に

 事前採血には他にも良い点があります。

 毎日たくさんの患者さんを診ているわれわれ外来担当医は、それぞれの患者さんの情報をしっかりインプットして診療に臨むために、事前に予習をしていることが多いです。事前採血で血液検査の結果が出そろっている状態だと、その予習で検査結果まで確認できます。落ち着いて時間をかけて分析ができるので、当日急いで確認するよりも、質の高い医療を届けられるのです。これは、待ち時間短縮よりも大きなメリットかもしれません。

 ◇デメリットも

 一方で、病院に2回来ないといけないという大変さはデメリットです。しかし、採血室が混む時間帯を避ければ、検査日の院内滞在時間はかなり短くできます。病院によって差はありますが、朝の早い時間帯はやはり混むため、昼から午後にかけてがお勧めです。

 また、当日の急な体調変化が検査結果に反映されないというのも無視できないデメリットでしょう。診察で必要と判断されれば、もう一度採血をお願いすることとなります。

 このような弱点もありますが、病状がある程度安定した患者さんにとっては、それを上回るメリットがあるのが事前採血です。もちろん、疾患によっては残念ながらできないということもあるでしょう。まずは主治医に聞いてみてください。(了)

渡邉昂汰氏


 渡邉 昂汰(わたなべ・こーた) 内科専攻医および名古屋市立大学公衆衛生教室研究員。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。

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