新米医師こーたの駆け出しクリニック

なんと精巣捻転になりました
~治療の遅れは致命的~ 専攻医・渡邉昂汰

 つい3週間ほど前のことです。朝起きてすぐ、陰嚢(いんのう)の痛みと腫れ、鼠径部(そけいぶ)の痛みがあることに気付きました。立ち上がると痛みは増大し、横になると少し和らぐようです。しばらく様子を見ましたが、症状が改善しなかったため、近所の泌尿器科を受診しました。結果は「精巣捻転症」でした。

精巣に痛みを感じたら、すぐに受診を。対応の遅れは取り返しのつかない事態を招きかねない

精巣に痛みを感じたら、すぐに受診を。対応の遅れは取り返しのつかない事態を招きかねない

 感染症かと思ったら…

 成人の精巣が痛むとき、最も頻度が高いのは、精巣の外側にある精巣上体という組織に菌が付着して起こる精巣上体炎という病気です。泌尿器科は専門外ではありますが、おそらく自分も精巣上体炎になってしまったのだろうと思い、抗菌薬治療が必要かと考えていました。

 しかし、泌尿器科の先生に診察していただくと、精巣上体は全く腫れていませんでした。感染した場合は尿検査・血液検査で異常が出ることが多いのですが、これらの検査でも問題はありませんでした。そして、年齢的にはとても珍しいものの、精巣につながる管である精索がねじれてしまう精巣捻転症で、その中でも完全にはねじれ切っていない「間欠性精巣捻転」だと診断されました。

 ◇痛みや腫れ、乳児・思春期に多く

 精巣捻転は12〜18歳で最も起きやすく、次いで多いのが乳児期です。30歳以上で起こるのはまれと言われています。ただ、ベルクラッパー奇形という生まれつき精巣が捻転しやすい体質の人は、私のような年齢でも発症するケースがあるので注意が必要です。

 症状としては、精巣の痛みや腫れがメインですが、吐き気や腹痛を起こすこともあります。今回、自分が発症して初めて学んだのですが、捻転の前触れがある場合もあります。精巣捻転患者の20~60%に、一過性の疼痛(とうつう)発作の経験があるとされています。私自身も、これまでに何度か起床時の精巣の痛みと鼠径部の違和感を経験していましたが、すぐに改善するので放置してしまいました。

 ◇精巣喪失の危険性

 精索の中には精巣に栄養を送る血管が入っており、捻転すると血流は途絶えます。発症後6〜12時間以内に捻転を解消できれば高い確率で精巣を温存できますが、時間が経過するごとに温存は困難となり、24時間以上たつと多くは精巣摘除となります。時間との勝負であり、早期の受診がとても重要です。

 幼児や思春期の子どもの保護者に必ず覚えておいていただきたいのは、精巣捻転では精巣の痛みではなく、下腹部痛を訴えて受診する場合も多いということです。本当は精巣が痛くても、小さな子は精巣の痛みをうまく表現できなかったり、思春期だと恥ずかしくて伝えられなかったりすることもあります。また、捻転は夜間・早朝によく起きます。受診をためらってしまう時間帯ですが、タイムリミットがあるため、朝まで我慢せずに、すぐの受診をお願いします。

 幸い、私は間欠性精巣捻転で、ねじれは自然に解消されたため手術には至りませんでしたが、痛みにより日常生活に支障を来し、精神的な負担もかなりのものでした。この痛みに苦しむ人が、一刻も早く適切な診療を受けられることを願ってこの記事を書きました。成人男性も男児を持つ保護者も、当事者となったときに迅速な対応ができるよう、頭の片隅に留めておいていただけるとうれしいです。(了)

渡邉昂汰氏

渡邉昂汰氏


 渡邉 昂汰(わたなべ・こーた) 内科専攻医および名古屋市立大学公衆衛生教室研究員。「健康な人がより健康に」をモットーにさまざまな活動をしているが、当の本人は雨の日の頭痛に悩まされている。

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