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肺がん患者の大半は高齢者だ。完治が困難な場合、多くの人は単なる延命治療を望まない。東京都健康長寿医療センター(東京都板橋区)の山本寛・呼吸器内科部長は老年医学の観点を生かし、生活機能の維持を重視しながら治療を進める。人生の最終段階を見据える患者は、どのようにがんと付き合えばいいのか、ヒントを聞いた。
◇「闘わない」より「上手に付き合う」
「がんとは闘わない」という人もいる。そんな人に対して山本部長が強調するのは、がん治療の変化。「高齢の肺がん患者も大きなメリットを得られる時代になってきた」ということだ。
肺がんのうち、小細胞がんは進行が速いが、抗がん剤や放射線療法はよく効く。非小細胞がん(さらに腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんに分類される)は、比較的進行が緩やかなものの、抗がん剤や放射線の効果は今一つで、手術ができる場合は手術が基本だ。
近年、従来の抗がん剤に加えて、正常な細胞を傷つけずにがん細胞に作用する「イレッサ」(一般名ゲフィニチブ)などの分子標的薬や、人に備わる免疫の力を働かせる「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)などの免疫チェックポイント阻害薬が次々と登場。個々の患者の遺伝子異常やたんぱく質などの特徴で、それぞれのがんに合う薬があるかどうかを調べることも、ある程度可能になった。
こうした薬は費用が高額で、間質性肺炎のような重大な副作用を伴う恐れもあるが、一般的には従来の抗がん剤より吐き気や脱毛、白血球減少といった副作用は比較的軽い。薬の投与を受けた患者のがんが劇的に縮小した人もいる。「高齢者にも比較的使いやすい。免疫チェックポイント阻害薬では、むしろ生活の質(QOL)が向上することもある」と山本部長は話す。
こうした治療の変化もあり、肺がんがステージ(病期)4まで進行した高齢患者でも、きちんとした薬物治療を受けられる場合には、日常生活への影響を最小限に抑え、終末期のつらい症状が出るのをかなり先に延ばすことも期待できるという。「副作用を減らす治療も非常に進歩した。昔なら半年頑張るのが精一杯だった患者でも、3倍の生命予後が期待できる。ご本人に合う薬があれば、高齢患者でも非常に長い期間、治療を続けながら日常生活を送れる方もいる。患者さんごとに、がんとうまく付き合っていくための方法を提案しています」
同センターの患者には、手術や放射線治療を受けずに8年間、薬を変えながら薬物治療だけを続け、平均寿命(87・14歳)を超えた患者もいるという。
(2018/03/04 10:31)
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