一流に学ぶ 減量手術のパイオニア―笠間和典医師
(第3回)
黎明期の内視鏡手術と出合う
救急医療志した若き日
◇魅了された恩師の高い技術
翌年の1996年、同病院に生涯の恩師となる加納宣康氏(現・千葉徳洲会病院長)が赴任し、内視鏡下手術センターを設立した。内視鏡というと胃カメラを思い浮かべる人が多いが、外科が行う内視鏡(腹腔鏡)手術は、おなかに小さな穴を開け、そこから器具を挿入して画像をモニターに映し出し、それを見ながら手術をするというもの。日本では、まだ黎明(れいめい)期の手術だった。
加納氏の腹腔鏡手術を目の当たりにした笠間氏は、その技術レベルの高さに圧倒された。「腹腔鏡手術はちゃんとトレーニングを受けていない人がすると、出血でおなかの中がグチャグチャになって、今どこを手術しているのか分からなくなる。加納先生の手術は出血が少ないので、術野がきれいで無駄がないから、スピードも速い。それまでに見た手術とはまるでレベルが違いました」
腹腔鏡手術を受けた患者の回復は、おなかに大きくメスを入れる開腹手術の後とは比べものにならないほど速かった。「手術の翌日から歩いているというのは、開腹手術では考えられないことですから」
腹腔鏡手術は患者に優しく、医師の負担は大きい手術といわれる。医師の技術レベルの差がより鮮明に現れるだけに、やりがいもある。笠間氏の専門領域は、おのずと内視鏡外科へと絞られていった。(ジャーナリスト・中山あゆみ)
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(2018/05/03 10:00)