一流に学ぶ 減量手術のパイオニア―笠間和典医師

(第7回)
米国で恩師と出会う
世界一の技に感動、猛練習

 日本で初めての腹腔鏡下胃バイパス術による減量手術が成功した後、笠間和典氏は勤務先の堀江病院に肥満外科チームを立ち上げ、本格的に減量手術を行うべく準備を進めていた。そこで、チームの一人と共に、この手術で世界一の腕を持つと称される医師の手術を見学に行くことにした。

 ブラジルで減量手術を勉強した際、リオデジャネイロで手術を見せてもらった医師から1本のビデオを渡された。ケルビン・ヒガという日系米国人の執刀した腹腔鏡下の胃バイパス手術の映像が収められていた。帰国後にそれを見た笠間氏は、衝撃のあまり言葉を失った。

「本当にきれいで、いつかこの手術を見に行きたいと思いました」

ケルビン・ヒガ氏(左)とツーショット

 ヒガ氏はサンフランシスコに近いカリフォルニア州フレズノという町で開業し、私立病院に出向いて手術を行っていた。念願を果たし、目の前で見たヒガ氏の手術は圧巻だった。

 「こんなに美しい手術は見たことがないというくらい華麗な手術でした。本当に無駄がなくて、おなかの中で縫っていく針の動きがダンスをしているかのようでした。しかも手術時間は2時間かからないという速さでした」

 ヒガ氏は大学教授という肩書があるわけでもない開業医。だが、手術の腕一本で有名になり、米国肥満代謝外科学会の会長にも就任した。

 笠間氏が「僕はあなたみたいな天才ではないから、そんな手術はできない、無理だ」と言うと、ヒガ氏は「私は自分が天才だからこの手術ができているとは思わない。実際に私と一緒にやっている2人の外科医は私と全く同じ手術ができる。大事なのは練習し続けることだ」と答えた。

 この時から、笠間氏の医師としての目標はヒガ氏になり、帰国後すぐに手術の猛練習を始めた。「練習用のボックスの中にゴム製の指サックを二つ入れ、腹腔鏡を使って一つにつなぎ合わせる練習です。もう、暇さえあれば練習しました。練習量では絶対誰にも負けないというくらい」

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