一流に学ぶ 心臓カテーテルのトップランナー―三角和雄氏
(第11回)
スーパースターは要らない
当たり前のことを普通に
三角氏のチームは冠動脈だけでなく、頸(けい)動脈や脚の動脈もすべて治療対象にしている。
「心臓が治っても、脳梗塞などで歩けないのでは困るんです。カテーテル治療という局所麻酔で、患者さんに優しい治療をするのなら、心臓以外の血管も治療できるようにならなければいけない」と三角氏。その上で「血管だけが人間の臓器じゃない。狭心症、心筋梗塞だけでなく、心不全や弁膜症、循環器疾患はすべて診なければダメ。内科全部を診ないといけないんです」と強調する。
三角氏が院長を務める千葉西総合病院では、内科、循環器、カテーテルの各専門医の資格すべてを強制的に取らせる。「受験料は合格したら病院持ち、落ちたら自分持ちです」と笑う。
三角氏は30年前、米国ニューヨークの市立病院で働いていたが、日本の内科専門医試験を受けるために帰国したことがあった。米国では循環器専門医が取得するのは当たり前で、三角氏も日本で働く際に必要だと考えたからだ。東京医科歯科大の医局の先輩からは「内科の専門医資格なんてメリットはない。わざわざ取りに帰国するなんて、バカだな」と言われた。
しかし同大の恩師で、当時の故前沢秀憲第三内科主任教授は「専門医資格は将来必ず必要となる。どっちがバカかそのうち分かる」と言った。図らずも故前沢教授の先見の明が証明されたわけである。
2018年度に開始予定の新専門医制度では、まず基本領域で専門医を取得し、その後、より専門性の高いサブスペシャリティー領域の専門医資格を取得するよう定められた。内科系医師にとって、内科専門医の取得は基本とされる時代が来るのだ。(ジャーナリスト・中山あゆみ)
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(2018/03/27 10:00)