こちら診察室 介護の「今」
要介護認定めぐる悲喜こもごも 第24回
◇要介護度と負担
一方で、「要介護度が高ければ利用料の負担が増える」という側面もある。要介護度が高くなるほど利用料が増えるサービスもあるし、サービスを使うほど利用料の支払いはかさんでいく。
「そのサービスはまだ必要ないよ」
「何とか自分でやってみるわ」
「家族が世話をしてくれるから」
こうした言葉の裏に、「利用料を払えない」という家計の事情が横たわっていることも少なくない。
そもそも、介護保険開始当初の自己負担は一律1割(低所得者などを除く)であった。しかし、「制度の持続可能性」の理由から、2割負担、3割負担が導入された。つまり、「取れる人からは取る」というわけだ。介護保険料も、25年度は制度当初より3倍以上も上がる予定だ。利用者の負担は確実に増えている。
事業者への介護報酬を増やせば、それが介護保険料やサービス利用料に跳ね返ってくるというジレンマから介護保険は抜け出せないでいる。
「利用者の要介護度が軽くなれば加算が入る仕組みもあるが、そもそもサービスの基本報酬が減らされるので、自立支援は差し引きすればマイナスだ」という事業者の声も聞く。
◇金の切れ目が命の切れ目
利用料を払えないばかりに、「金の切れ目が命の切れ目」という悲劇的な結末に至ることすらある。ケアマネジャーの一人は「応益負担を基本ベースとした制度が招く悲劇」と顔を曇らせる。応益負担とは、利用したサービスの種類や量(受けた利益)に応じて、費用を負担する方式である。
社会保障とは、「国民の生存権の確保を目的とする国家的保障」(広辞苑)だ。ある家族は、大学での憲法の講義を思い出しながら次のように語った。
「介護が必要な人ほど負担が大きくなるなんて、介護保険って社会保障とは違うのね」(了)
佐賀由彦(さが・よしひこ)
1954年大分県別府市生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。フリーライター・映像クリエーター。主に、医療・介護専門誌や単行本の編集・執筆、研修用映像の脚本・演出・プロデュースを行ってきた。全国の医療・介護の現場を回り、インタビューを重ねながら、当事者たちの喜びや苦悩を含めた医療や介護の生々しい現状とあるべき姿を文章や映像でつづり続けている。中でも自宅で暮らす要介護高齢者と、それを支える人たちのインタビューは1000人を超える。
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(2024/03/05 05:00)
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