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要介護認定めぐる悲喜こもごも 第24回

 介護保険が始まってから、2025年で四半世紀を迎える。

 昭和22〜24年(1947~49年)の第1次ベビーブーム期に生まれた「団塊の世代」の全員が、75歳以上の後期高齢者になる「2025年問題」の年である。

 四半世紀の間に、こんなやりとりが定着した。

要介護認定の結果に利用者やその家族は一喜一憂する

要介護認定の結果に利用者やその家族は一喜一憂する

 ◇「要介護認定」という吉報

 「どうなんでしょうか。母の要介護認定は本当に出るのでしょうか?」

 これは、要介護認定の結果を持つ娘が暫定ケアプランを組んでもらったケアマネジャーに不安な面持ちで投げ掛けた質問だ。すなわち、要介護認定が吉報で、認定非該当の「自立判定」が凶報というわけになる。

 介護保険の要介護認定をめぐるごく普通のやりとりなのだが、考えてみれば何か妙だ。

 ◇重度判定を喜ぶ

 病院で検査を行い、その結果を待つ患者なら、「大丈夫、異常はありませんでした」との医師の言葉にホッと胸をなで下ろすものだ。がんのステージの診断なら、ステージ4よりもステージ1と告げられる方がいい。

 ところが、介護保険の要介護認定はその逆だ。要介護認定が出ることや重度の認定を心待ちにする。病気の診断では「軽ければ喜び、重ければ憂える」のだが、要介護認定の場合は「高ければ喜び、低ければ憂える」という構図なのだ。

 ◇行政のさじ加減が働く

 かつて、要介護認定方法の見直しが行われた際に、「状態が変わっていないのに、何で判定が低くなるの!?」と混乱が生じたことがあった。

 その要因には、要介護度を低く出せば財政負担が少なくなるという介護保険特有の仕組みがあり、要介護認定には行政のさじ加減が働くことがあるからだ。

 ◇介護保険の仕組み

 介護保険のサービスは、要介護度ごとに定められた「区分支給限度基準額」の範囲内であれば、保険の適用となる。

 区分支給限度基準額による利用限度額やサービス料は地域によって若干異なるが、最も重度な要介護5の場合は36万円強、最も軽い要支援1の場合は6万円強が保険適用の限度だ。その範囲内であれば、所得に応じて1〜3割が自己負担となり、限度基準額を超えた場合は全額が自己負担となる。

 給付費の財源は、保険料と税金が5割ずつで、税金のうち在宅サービスの場合はその半分、残りは都道府県と市町村が4分の1ずつを支出する。

 つまり、要介護度が高い人が増え、その人たちが介護保険のサービスをどんどん使うようになると、財政負担が増えるわけだ。そこで行政は、要介護認定が高い人を増やさないための策を講じることになる。

 ◇重度者を増やさないための策

 要介護認定の仕組みをいじり、重度者を増やさないようにするのは言語道断だが、それはさておき、国は「自立支援」「介護予防」「重度化防止」という名の下にさまざまな策を講じてきた。

 2024年度介護報酬改定でも、リハビリテーション関連、施設からの在宅復帰支援、要介護度を軽くするための支援についての加算を手厚くするなどの見直しが行われる予定である。

 ◇サービス利用のライセンス

 本来、「要介護認定の結果が低くなれば元気になった証明だから、喜ばしいことだ」となるはずである。ところが、介護保険の仕組みにより、その声を聞くことは少ない。

 利用者が要介護認定の申請を行う動機は、介護保険サービスを使うためである。言うなれば、「要介護認定はサービス利用のライセンス」なのだ。

 要介護者を抱える家族には介護負担が重くのしかかる。「介護の社会化」のキャッチフレーズとともに、2000年4月に介護保険が始まった。だが、家族の介護負担の解消には至っていないという現実がある。

 ある利用者の家族はつぶやいた。

 「状態が悪くなるのを喜ぶなんて、何だか変ですよね」

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