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「総合診療」に専門医資格
新制度スタートで新たな役割【知ってる総合診療科8】

 2018年4月、日本で新しい専門医制度がスタートしました。それまでにも各医学会が認定する「専門医」という資格は存在したのですが、新専門医制度は各医学会から独立した形の一般社団法人「日本専門医機構」を設立し、この機構が専門医を認定する仕組みとなりました。 

 従来の専門医は、各学会が独自に設定した資格でした。国で統一された基準が設定されていたわけではなく、そのレベルも一定ではありませんでした。また、さまざまな名称の専門医が乱立し、患者など一般の人には何の専門なのか分からない資格もありました。こうした弊害を改めるため、新制度が作られたのです。 

総合診療専門医は「扱う問題の広さと多様性」が特徴

総合診療専門医は「扱う問題の広さと多様性」が特徴

 ◇「自由標榜制」の下で 

 総合診療医の分野でも、かつては日本家庭医療学会やプライマリ・ケア学会が認定していた資格があり、それなりに研修していたのは事実です。しかし、一般には浸透せず、診療科として「家庭医療科」とか「プライマリ・ケア科」などを掲げている病院や診療所はほとんど存在しないのが実情です。 

 そこで現在は、それまでの日本家庭医療学会と日本プライマリ・ケア学会、日本総合診療医学会が合流して「プライマリ・ケア連合学会」となり、新専門医制度における総合診療専門医の育成に力を注いでいます。 

 なぜ専門医資格の浸透と確立が必要なのでしょうか。 

 現在の日本はどの診療科も標榜できる自由標榜制です。例えば、一人の医師が専門医の資格を持たなくても、「内科・小児科・皮膚科」や「総合診療」を掲げて診療できてしまいます。 

 ◇不透明な習熟度 

 実際、「内科」と掲げていても、開業前に働いていた医療機関で内科医として働いていなかった場合すら考えられます。標榜するだけでなく、専門医の資格を持っているかどうかが、重要性を増しているのです。 

 あるいは病院勤務時代は消化器内科医であったとしたら、「内科・消化器科」と標榜して消化器内科医であったことを伝えようとするでしょう。しかし、この医師が消化器以外の内科をどこまで習熟しているかは分かりません。 

 現在でも「医師ならば専門が違っても何でも診療できる」と思っている人も少なくないかもしれません。しかし、現実は異なります。この数十年の医学の進歩はすさまじく、専門でない疾患を適切に診療するには、やはりそれなりの期間の専門的な研修が必要になっています。 

図1 新専門医制度

図1 新専門医制度

 ◇19番目の新資格 

 医学生や初期研修医時代に受ける研修では足りないのが現在の医療で、総合診療科にも同じことが言えます。

 初期研修制度では、医師免許を取得した新人医師はまず、基本的な診療である「プライマリ・ケア」の技能を習得。次の段階として、さまざまな専門医を目指した研修を受けます。 

 この段階で専門医は、図1のように2階建て構造になっています。専門医を目指す医師は、まず1階部分のいずれかの専門医の道を選択しなければなりません。この段階の専門医は、一般の人たちにも聞きなれた名称が並んでいます。日本専門医機構はこの1階部分に19番目の新たな専門医資格として「総合診療専門医」を加えました。 

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