こちら診察室 きちんと治そう、アトピー性皮膚炎

第6回 光線療法やバイオ医薬品の注射薬も
~アトピー性皮膚炎の最新治療と今後は~ 野村有子・野村皮膚科医院院長

 ◇赤ちゃんから保湿ケアで発症率低減

 ただ、現時点では、いくら新しい治療を行っていても、基本的な保湿ケアや悪化因子の除去ができていなければ、必ず再発してしまいます。普段からのメンテナンスを忘れないことが大切です。最後に、最新情報に基づいたスキンケアに役立つ知識を紹介しましょう。

 スキンケア製品は、何が一番いいのかは、まだ明らかになっていません。ただし、肌との相性があり、含まれている成分や使用感と肌質がうまく合うと、効果が上がります。

 乾燥がひどい場合は、保湿効果の高いクリームタイプや油分の多い軟こうタイプ、乾燥が軽度な場合や汗をかきやすい場合は、水っぽいローションタイプや使用感の軽い乳液タイプが好まれます。香料や界面活性剤は肌への刺激になることが多いので、含有製品は避けた方が無難です。

 実際に皮膚に塗ってみて、使用感が良くて潤うものを選んでください。逆に、塗った後にピリピリ刺激感を感じたり、赤くなったりかゆくなったりするものは、肌に合っていない場合が多いので、他の製品に変えた方がいいと思います。

 近年になって、生後間もない頃から保湿ケアをすると、アトピー性皮膚炎の発症率が下がるというデータも出ました。特に3歳までは、皮膚のバリアー機能が大人より弱いので、生後まもなくから3歳ころまでスキンケアを継続することが大切です。

 ◇「美肌菌」や腸内細菌の応用を期待

 皮膚や腸にたくさん存在する細菌も、アトピー性皮膚炎と関係があります。

 アトピー性皮膚炎になった場合、皮膚表面に黄色ブドウ球菌が増える一方で、他の細菌の集団(細菌叢=そう)の種類が少なくなり、バランスが保てなくなっていることが分かってきました。また、小児の重症患者では、腸内のビフィズス菌がとても少なくなっていることが報告されています。

 食生活や生活環境などの要因で細菌叢が乱れると、アトピー性皮膚炎は悪化すると考えられています。人間の体にとっていい美肌菌と呼ばれる細菌や腸内細菌を治療に応用する時代が、今後来ることが期待されています。

 アトピー性皮膚炎の症状や原因は人それぞれ違います。ですから、治療方法も人それぞれ違ってきます。薬の組み合わせ、スキンケア方法、生活の仕方など、それぞれの人にふさわしいきめ細かな治療や指導が必要となります。

 「100人のアトピー性皮膚炎の患者には、100通りの治療方法がある」と、私は常日頃、申し上げています。今後、一人ひとりの患者に合ったオーダーメードの治療ができるようになり、すべての人のアトピー性皮膚炎が治ることを、心より願っています。(完)(野村皮膚科医院院長・野村有子)

 野村 有子氏(のむら・ゆうこ)
 1961年岩手県生まれ。慶応義塾大医学部卒。同大助手などを経て、98年に野村皮膚科医院を開業。さまざまな皮膚疾患を治療し、スキンケアのきめ細かな指導を行う。雑誌やテレビなどの取材も受け、啓発活動に積極的に取り組む。




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