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白内障手術の方法と合併症 【第3回】

 白内障は水晶体(レンズ)の中身が濁ってくることによって、視力低下やかすみといった症状が出現します。手術で中身を取り出せば、すっきりとした濁りのない状態になるのですが、水晶体はピントを合わせる役割を持っています。もし取り出すだけで手術を終えてしまうと、強度のピンボケ状態(遠視)になるので、代わりのものが必要となります。これが眼内レンズです。

 ◇水晶体を人工レンズに入れ替え

 水晶体は弾力性のある水晶体嚢(のう)という袋に覆われ、その袋はチン小帯と呼ばれる細い多数の糸のようなもので目の中に固定されています。実際の白内障手術では、水晶体嚢の一部を丸い形で切り取って中身を露出させ、専用の機械で取り出し、空になった袋の中に眼内レンズを入れて固定します。

白内障手術のイメージ図。(左上から時計回りに)記事中の3、4、5、7の様子

 もう少し詳しい手順を説明すると、

 1. まぶたと目の消毒
 2. 局部麻酔(点眼 、注射)
 3. 角膜あるいは強膜を切開
 4. 水晶体前嚢を円形切開
 5. 中身を分割粉砕
 6. 中身を吸引
 7. 眼内レンズを挿入

 という順序で進行します。消毒と麻酔は少ししみる感じ、3以降の手順においても目に触れられる感覚や押される感覚はありますが、痛みはほとんどありません。強度近視の方は他の方に比べると痛みを伴いやすいので、前房内麻酔を行うとよいことが知られています。

レーザーを使った手術。前嚢を円形に切開した後、中身を細かく砕いて吸引

 ◇レーザーも選択肢

 現在の白内障手術では、これらの過程のうち、3から5を手動で行う超音波乳化吸引術(以下超音波)と、自動で行うフェムトセカンドレーザー手術(以下レーザー)があります。

 レーザーが可能な医療機関は非常に少なく、多くの皆さんは超音波で手術を受けることになります。超音波とレーザーによって、手術の安全性や手術後視力に違いがあるのか気になるところです。現在までにさまざまな施設から報告が出ていて、レーザーの方が優れているという報告もあれば、どちらも結果は同じという報告もあります。

 一方で、進行した白内障や、水晶体全体が白く濁ってしまう成熟白内障などの合併症を生じやすい症例に関しては、レーザーに分があることは確かです。また、執刀件数の少ない医師と多い医師では合併症の発生頻度に差が生じますが、レーザーでは差がより少ないという報告もあります。

手術の費用。自由診療は目安となる金額で、施設により異なる

 どちらも安全な手術と言えますが、皆さんが医師に執刀件数を聞くのは難しいでしょうから、どの医師が執刀しても一定水準以上の手術が受けられるレーザーには安心感があるとみられます。ただ、残念ながら手術費用は大きく異なります。レーザーを選択するかどうかは皆さんの価値観で考えてください。

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