こちら診察室 膝の痛みと治療法の新たな選択肢

膝のMRI検査で何が分かる?
~知っておきたいレントゲンとの違い~ 【第5回】

 膝のMRI検査に不安を抱いている方はいらっしゃいませんか。

 MRIと聞いて、一体どんな検査なの? 大掛かりな検査だったらどうしよう? と心配してしまう方も多いはず。

 そこで今回は、なぜレントゲンだけではなくMRIをお勧めするのか。MRIで何が分かるのか。実際にMRI診断を受けた患者さんの症例と参考画像を交えてご紹介します。MRI検査は膝の痛みの原因を特定し、解決に導く治療の前準備です。膝のMRI検査を控えている方や、受診検討中の方はぜひ参考にしてみてください。

 ◇レントゲンとMRIの違い

 レントゲン撮影とMRI撮影。どちらも医療でよく使われる画像診断法ですが、それぞれに得意な部分があります。

・レントゲン撮影(単純X線検査

 放射線を使って撮影する検査です。主に骨の異常や関節の状態を観察するのに有効です。例えば、骨折やO脚、関節の隙間の消失などが分かります。しかし、レントゲンでは骨の外見しか見ることができません。骨の内部や軟部組織の半月板(はんげつばん)や靱帯(じんたい)、軟骨などは見ることができません。

・MRI撮影

 強力な磁石と電波を使って体内の組織を詳細に映し出します。骨だけでなく、半月板や軟骨、靭帯など、骨以外の組織まで見ることができるため、膝の痛みの原因が特定しやすくなります。例えば、半月板損傷や変形性膝関節症の進行具合などを、MRIで詳しく確認することができます。レントゲンでは分からなかった膝の痛みの原因が、MRI検査で判明することも少なくありません。

MRI検査とレントゲン検査の違い(ひざ関節症クリニック作成)

 変形性膝関節症と診断された方のMRI診断

 ご紹介する患者さんは、78歳の女性です。20年も前から両膝の痛みに悩んでいたと言います。近所の病院で何回もヒアルロン酸注射を打ち続けてきましたが、痛みが改善することはありませんでした。

 かかりつけの病院で相談しても「加齢だから仕方ない」「人工関節しかない」と言われ続けてきたそうです。

 痛みはどんどん強くなるものの、それでも「人工関節にはしたくない!」という、とても強い思いを持たれていたこちらの女性。まずは膝の痛みの原因を知るためにMRI検査を受けられました。

変形性膝関節症末期のMRI画像(ひざ関節症クリニック提供)

変形性膝関節症の末期と確定診断

 右膝の内側に骨棘(こっきょく)と呼ばれる、骨の異常を確認。これは骨がトゲのように変形する、変形性膝関節症の代表的な画像所見です。MRIで検出された骨棘スコアは、人工関節手術が必要か判断する上で一つの重要な要素となり得るという研究報告もあります[1]。また、画像の囲み部分は、本来なら半月板が見られるはずの関節の隙間が、完全に消失している状態を示します。この情報から、変形性膝関節症の末期という確定診断になりました。

MRI画像から見るO脚の度合い

 同時に、O脚の度合いも測定しました。大腿(だいたい)骨と脛骨(けいこつ)の外側の角度を測定することで、どれくらいO脚が進行しているか診断することができます。

 個人差はありますが、このような値が目安です。

・180°以上…O脚

・176°前後…正常

・176°以下…X脚

 こちらの患者さんの角度は184°。

 つまり、O脚であると言えます。

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