ダイバーシティ(多様性) 障害を持っても華やかに

みんなが当たり前に知っている音を知らない!
~「テッテレー?」「ドッキンドッキン?」~ (ソニー出身、デフサポ代表取締役 牧野友香子)【第13回】

 ◇YouTubeのどこが面白いの?!と思っていた数年前

 私は、耳がほぼ聞こえないので、実は、これまでみんなが楽しいという、YouTubeを”楽しい”!と思ったことがありませんでした。

 字幕やテロップも付いていないものがほとんどでしたし、何を話しているのかが全く分からなくて、一昔前のテレビを見ているようで、つまらないなあ・・・と思っていました。

 ところが、2年前に初めて、フルテロップを付けていて、かつトークメインの面白い動画に出合い、普段見えない日常の会話が見えることを知り、YouTubeって面白い!とハマりました。

 そんな私が、YouTube(デフサポちゃんねる)を始めたのが昨年。

YouTube(デフサポちゃんねる)より

 そして、その出合いで初めて知った音がたくさんあります。「聞こえない人って、そうか!その音も知らないのか〜」と、きょうは皆さんにもびっくりしてほしいなと思っています。

 ちなみに、これまで簡単に字幕とかテロップ付けてよ〜と思っていたのですが、YouTubeを作る側になって初めて、フルテロップって超大変な作業なんだな・・・と製作者側のしんどさも知ったので、フルテロップを付けているYouTuberさんには、めちゃくちゃ感謝しています。

 ◇BGMを初めて知る

 初めてYouTubeに動画をアップしてみたところ「ユカコの動画って、めちゃくちゃ静かだね〜」「なんか全くBGMがありません!って感じ」といろんな人から言われて、そこで初めて「BGM」を知りました。説明を聞いて、めちゃくちゃ驚きました。

 「ええ!人が話している時にそのバックグラウンドで音を流すの!?」「逆に音声が二重になるってことは、人の話し声がかなり聞こえなくなっちゃって、なんて言っているのかが分からなくなっちゃうんじゃないの・・・?」

 「いや、結構背景みたいな感じで逆にBGMがあった方が聞きやすいし、イメージとかも湧きやすいんだよ」と言われた時の衝撃は、今でも忘れられません。YouTubeだけではなく、レストランや、お店でも当たり前のようにBGMはかかっているんですね。

 知識としてBGMといった単語は聞いたことがあっても、日常の中でそんなに当たり前のようにあるなんて知りませんでした。

 ◇効果音を知る

 同じタイミングで「効果音」の存在も知りました。

 「ドッキリでした〜!」というときは「テッテレー」、ドラマで告白するシーンのときは「ドッキンドッキン」と心臓の音が流れたり、ホラー映画のときは流れていた音楽が突然止まったり、何かを紹介するときは「ジャン!」とか「ジャジャーン!」が流れていると聞き、さまざまな音で心情を描写していることを32歳で初めて知ったのですが、正直言って、カルチャーショックでした。

 私からすると、音にそのようなイメージが結び付いていることを知らなかったので、何度効果音の説明を聞いても「めちゃくちゃ不自然!!!」というふうに感じています。

 だって、告白シーンなのに、本当には聞こえない「ドッキンドッキン」って音を出すのって変じゃないですか・・?「ええ!だってリアルだと、その『ドッキンドッキン』って聞こえないんだから変やん!不自然じゃない?」と、聞こえる友人たちにこれを伝えても、みんな、「ええ、そんなに変?普通だよ〜」という感じで誰も賛同してくれませんでした。笑

 「テッテレー!」も、どうしてドッキリイコール「テッテレー!」なのか?「ドッキリー!」とかなら分かるのですが「テッテレー!」と聞くだけで、もうすぐ「『ドッキリかぁ〜』と分かるもんなの?!」とすごく疑問に思うのですが、皆さんからすると当たり前なことなんですよね、きっと。そのくらい、音や音楽って生活の中で密接に関わっていて、きっと音を聞けば「こういうことだよ!」と説明があるくらい明確なのかなあと想像しています。

 ◇音でのお知らせが多すぎる・・・!

 そして、効果音やBGMの話をきっかけに、世の中に私が知らない音が、まだまだたくさんあることを痛感することになりました。

 今、PayPayやLINEPay、ICOCA、Suica、といった、さまざまな電子決済がありますよね。それらの決済のタイミングでも音が鳴っているんですね!「知らなかった〜」。しかも、それぞれの決済方法によって、音も違うとのこと!それを聞いて「ハッ」としました。

 私は、実は何度か払い忘れ(タッチして払ったつもりなのに払えていなかった)をしたことがあり、店員さんが追い掛けてきてくれたことがあります。それ以降、できる限り、お金が引かれたか、レジやいろいろなところで金額を絶対に凝視するように気を付けて過ごすようにしています。

 でも、周りではみんなそういうそぶりもなく、当たり前のようにサクサク決済しているので「私のように押したつもりが押せていないことってないのかなあ?」と思っていたのですが、音で気付いているから「凝視しなくても音がしなかったらもう一度タッチしたりしているということかぁ〜!」と気付きました(これらのエピソードは、聞こえないだけではなく、私のおっちょこちょいな性格もかなり影響しています)。

 他にも電車の放送もそうですし、空港での放送、火災報知器も含め、さまざまなところでお知らせに音が使われているのを痛感しています。音ももちろん大事ですが、同時に「視覚的な情報も、もっとさまざまなところで使われるようになるといいなぁ〜」なんて思っています。

QRコード決済・バーコード決済

 ◇世の中は音であふれている

 そんな話をすると「聞こえないってめちゃくちゃ不便だねえ・・・」と言われたり、聞こえなくてほぼ無音に近い生活って「しんどくない?寂しくないの?ぶっちゃけどうなの??」と聞かれたりします。ただ、実際のところ私からすると、生まれた時から聞こえないので、この世界が当たり前の日常で「静かだな〜」と思うこともありませんし、「音を聞きたい!!!聞こえたらいいのになぁ〜!!」と思うことも意外とありません。

 生まれつき、聞こえる世界を知らないから。

 無音の世界そのものが当たり前すぎて「寂しい」なんて思いもしませんでしたし、音が聞こえないことそのものに「つらいなぁ」とか、「しんどいなぁ〜」と思うことは実はありません。

 もちろん、”コミュニケーション”に関しては聞こえないことで「『障害』・『バリアー』があるなぁ」と思うので、コミュニケーションという意味では「聞こえたら楽だろうなぁ〜」とは思うのですが、音そのものに関してはこだわりもないですし、私の場合は「聞こえるようになりたいなぁ!!」とも、そこまで思いません。

 でも、もし1日だけ耳が聞こえるなら、絶対に聞いてみたい音があります。

 子どもの声や家族の声は「どんな声がするのか?」「頭の中に思い描いているイメージと同じなのか?」は、聞いてみたいなぁと思っています。

 たまにYouTubeのコメントでも、夫の声が「『イケボ』だよ〜!」と書かれているのを見たりするのですが、男性と女性の声が違う(高い&低い)ことは知っていますが、同じ男性の中でも声に違いがあったりすること、そして「イケボ」なる言葉があり、かっこいい声があるということも最近知りました。

 余談ですが「『ブサボ?』ブサイクな声はあるんだろうか??」「どこを基準に、その声の『イケボ』とか『ブサボ』が決まるの。。?」そして、みんなそれぞれ顔に好みやタイプがあるように「声にもタイプ!とかあるんだろうか。。。?」私にとっては未知の世界で、ほんとうに音って当たり前のようにみんな聞いているけど「それ、当たり前じゃないんだよ!」「そっか、みんなそんなに音にあふれている中で過ごしているのかぁ〜」と改めて30代になってまで、まだまだ知らないことがいっぱいで、個人的に新しいことを知れる、今の状況にワクワクしています。(了)


牧野友香子さん

 ▼牧野友香子(まきのゆかこ)さん略歴

 株式会社デフサポ 代表取締役

 生まれつき重度の聴覚障害があり、読唇術で相手の言うことを理解する。

 幼少期にすごく良いことばの先生に出会えたことでことばを獲得し、幼稚園から中学まで一般校に通い、聴者とともに育つ。

 大阪府立天王寺高等学校から神戸大学に進学し、一般採用でソニー株式会社に入社。

 人事で7年間勤務。主に労務を担当し、並行してダイバーシティの新卒採用にも携わる。

 第1子が50万人に1人の難病かつ障害児だったことをきっかけに、療育や将来の選択肢の少なさを改めて実感し、2017年にデフサポを立ち上げ、2018年3月にソニーを退職し、聴覚障害児の支援に専念。デフサポでは聴覚障害児の親への情報提供、ことばの教育、就労支援を中心に実施。

 2020年より多くの人に難聴に興味を持ってもらいたい!とYouTubeでデフサポちゃんねるをスタートする。

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