慢性ヒ素中毒

 宮崎県土呂久地区と島根県笹ヶ谷地区では、農民などに皮膚角化症や、神経障害、皮膚がん、肺がんなどが多発しましたが、鉱山から排出された亜ヒ酸が原因でした。1973年と74年に相次いで公害病に指定されました。また、旧日本軍の化学兵器由来と考えられるヒ素で、井戸水や土壌が高濃度に汚染されていたという報告が、国内や中国でありました。
 バングラデシュはヒマラヤから流れる河川のデルタ地帯にひろがった低湿地に多くの国民が住んでいますが、そこで使われている井戸の多くに高濃度のヒ素が含まれていることがわかってきました。そのため、その井戸の水を飲んで生活している住民のなかには宮崎県の土呂久で見られたような皮膚症状をもつ慢性ヒ素中毒患者が多発していました。そこで宮崎で公害問題に取り組んできた人たちが中心になり、日本の国際協力機構(JICA)の援助を得て、ヒ素をろ過する装置の付いた安全な井戸を普及させる活動をおこなっています。

(執筆・監修:帝京大学 名誉教授〔公衆衛生学〕 矢野 栄二)
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