リハビリテーションの対象
■病気と障害の関係
病気の治りかたにはいろいろあり、すべての人が病気にかかる前の状態に完全に戻るわけではありません。わたしたちが病気になって、もっとも不都合に感じるのは、それまでの日常生活が送れなくなることです。
リハビリテーションでは、“もとの生活に戻ることができるようにする”ということが治療の大きな目的となり、「からだの機能に関する問題」「活動の制限に関する問題」「社会参加の制約に関する問題」といった各問題を分析・整理することで、それぞれに対応策を講じていくこととなります。
■どのような病気が対象になるか
リハビリテーションは「脳梗塞など脳の障害で手足が不自由になった人や、事故などで骨折した人のためにある」と、とらえられることも多いですが、そういった人だけではなく、リハビリテーションはさまざまな病気が対象となり、大別すると身体的障害と精神的障害に分けられます。
身体的障害を生じる病気としては、片まひや嚥下(えんげ)障害などが生じる、脳血管障害(脳卒中)、頭部外傷、脳腫瘍など、対(つい)まひや四肢まひを生じる、脊髄(せきずい)外傷、腫瘍など、骨関節障害として関節リウマチ、変形性脊椎症、変形性関節症、骨折、五十肩、腰痛症など、外傷や血管障害による四肢切断、神経難病としてのパーキンソン病、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索(そくさく)硬化症(ALS)、ギラン・バレー症候群などのさまざまな末梢神経障害、子どもの病気では脳性まひ、二分脊椎、筋ジストロフィー症、ダウン症などがおもなものです。
精神的障害では、統合失調症や気分障害(躁〈そう〉うつ病)など、精神科疾患やてんかんだけでなく、脳血管障害や頭部外傷で生じる失語症や記憶障害などといった、高次脳機能障害も対象となります。また、高齢社会の重大疾患であるアルツハイマー病など認知症を生じる病気も、取り上げられるようになりました。
そのほかにも、心筋梗塞や心臓移植後の人、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や胸部外科手術後の人、糖尿病や肥満、腎透析を必要とする人、人工肛門や人工膀胱(ぼうこう)の人などが、身体障害のなかでも内部障害として、リハビリテーションの対象となります。
昨今の研究の進展により、以前は原因不明といわれていた、さまざまな病気の病態が解明されてきています。しかし依然として、治療法があきらかでない病気も多く、診断確定後、治療法がないという理由だけで十分なリハビリテーションの恩恵を受けられないということがないようにする必要があります。
たとえ根治的な治療法がない病気の場合でも、病気により惹起(じゃっき)される障害の軽減を目指し、自立性の向上をはかることが重要であり、時には本人ならびに家族の生活の質(QOL:quality of life)を考え、装具や車椅子の処方、環境調整などを通じて生活しやすい状況をととのえていくことが、リハビリテーションとしての大きな役目になります。たとえば、神経疾患などは、永続的な障害を残すのみならず、進行性の病気も多いため、障害の軽減や自立性の向上を目指して、リハビリテーションをおこなうことで、いかに社会的不利益を少なくするかを考えていくことも、リハビリテーション医療の重要な責務となります。
病気の治りかたにはいろいろあり、すべての人が病気にかかる前の状態に完全に戻るわけではありません。わたしたちが病気になって、もっとも不都合に感じるのは、それまでの日常生活が送れなくなることです。
リハビリテーションでは、“もとの生活に戻ることができるようにする”ということが治療の大きな目的となり、「からだの機能に関する問題」「活動の制限に関する問題」「社会参加の制約に関する問題」といった各問題を分析・整理することで、それぞれに対応策を講じていくこととなります。
■どのような病気が対象になるか
リハビリテーションは「脳梗塞など脳の障害で手足が不自由になった人や、事故などで骨折した人のためにある」と、とらえられることも多いですが、そういった人だけではなく、リハビリテーションはさまざまな病気が対象となり、大別すると身体的障害と精神的障害に分けられます。
身体的障害を生じる病気としては、片まひや嚥下(えんげ)障害などが生じる、脳血管障害(脳卒中)、頭部外傷、脳腫瘍など、対(つい)まひや四肢まひを生じる、脊髄(せきずい)外傷、腫瘍など、骨関節障害として関節リウマチ、変形性脊椎症、変形性関節症、骨折、五十肩、腰痛症など、外傷や血管障害による四肢切断、神経難病としてのパーキンソン病、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索(そくさく)硬化症(ALS)、ギラン・バレー症候群などのさまざまな末梢神経障害、子どもの病気では脳性まひ、二分脊椎、筋ジストロフィー症、ダウン症などがおもなものです。
精神的障害では、統合失調症や気分障害(躁〈そう〉うつ病)など、精神科疾患やてんかんだけでなく、脳血管障害や頭部外傷で生じる失語症や記憶障害などといった、高次脳機能障害も対象となります。また、高齢社会の重大疾患であるアルツハイマー病など認知症を生じる病気も、取り上げられるようになりました。
そのほかにも、心筋梗塞や心臓移植後の人、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や胸部外科手術後の人、糖尿病や肥満、腎透析を必要とする人、人工肛門や人工膀胱(ぼうこう)の人などが、身体障害のなかでも内部障害として、リハビリテーションの対象となります。
昨今の研究の進展により、以前は原因不明といわれていた、さまざまな病気の病態が解明されてきています。しかし依然として、治療法があきらかでない病気も多く、診断確定後、治療法がないという理由だけで十分なリハビリテーションの恩恵を受けられないということがないようにする必要があります。
たとえ根治的な治療法がない病気の場合でも、病気により惹起(じゃっき)される障害の軽減を目指し、自立性の向上をはかることが重要であり、時には本人ならびに家族の生活の質(QOL:quality of life)を考え、装具や車椅子の処方、環境調整などを通じて生活しやすい状況をととのえていくことが、リハビリテーションとしての大きな役目になります。たとえば、神経疾患などは、永続的な障害を残すのみならず、進行性の病気も多いため、障害の軽減や自立性の向上を目指して、リハビリテーションをおこなうことで、いかに社会的不利益を少なくするかを考えていくことも、リハビリテーション医療の重要な責務となります。
(執筆・監修:帝京大学医学部リハビリテーション医学講座 准教授 中原 康雄)