歯根嚢胞〔しこんのうほう〕

 う蝕が進行して、歯の死んだ神経の穴を通じて歯根周囲にまで感染が及ぶと、根尖(こんせん)性歯周炎(歯根膜炎)になります。これを放置しておくと、炎症は慢性化し中に液体がたまったふくろを形成します。比較的多い病気で、上あごの前歯部および下あごの第一大臼歯(だいきゅうし)部に多くみられます。


[症状]
 はじめのうち症状はほとんどありませんが、感染がひろがると急にはれて痛くなります。進行するとやがて歯根の先端に相当する部分の骨が吸収されて、歯肉の上からでも押してわかるようになります。X線写真を撮影すれば、原因となった歯根の先端を取り囲むような骨の空洞として写るので、比較的簡単に診断がつきます。

[治療]
 小さいうちには歯の治療によって治りますが、大きくなったものでは嚢胞を完全に摘出するとともに、歯根の先端を切除する手術をするか、場合によっては抜歯をします。

(執筆・監修:東京大学 名誉教授/JR東京総合病院 名誉院長 髙戸 毅)
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