口唇口蓋裂〔こうしんこうがいれつ〕
上口唇(じょうこうしん:上くちびる)、歯槽(しそう:歯ぐき)や口蓋(こうがい:上あご)が割れている疾患をまとめて口唇口蓋裂と呼びます。
日本では、400~500人の出生に1人の割合で口唇口蓋裂の子どもが生まれています。
■分類
上口唇、歯槽、口蓋のどの部分が割れているかによって分類します。
■症状
割れ目の形(分類)によって症状は異なります。
■治療のあらまし
見た目、歯並び、ことばなどの症状が起こるため、形成外科、歯科、耳鼻咽喉科、言語聴覚士などの専門科が共同で診療します。
最近では、最初の手術(口唇形成術)の前に口蓋床による治療をおこなうことがあります。口蓋床は哺乳を改善する効果のほかに、歯ぐきや上あごの形を整えて、歯並びを良くする効果もあります。
割れ目のほとんどは2歳までに手術で閉鎖します。その後、小学校に入学するまでの間は、ことばや歯並びが大きく成長するため、定期的な通院をおこないます。なんらかの症状が見つかった場合は、言語訓練、歯科矯正、再手術などをおこないます。
何歳まで治療を続けるかは、割れ目の程度によって変わります。唇顎口蓋裂など割れ目が大きい患者さんは、中学生・高校生ころまで歯科矯正や鼻の変形に対する修正手術をおこなうこともあります。
このように、適切な時期に正しい治療を受けることによって、大きな障害が残ることは少なくなっています。
■代表的な手術
□口唇形成術
くちびるの割れ目を閉じる手術は生後3カ月ころにおこないます。鼻の変形に対する修正を同時におこなうこともあります。
両側唇裂の場合は、1回で両側を閉鎖する方法と、片側ずつ2回に分けて閉鎖する方法があります。
□口蓋形成術
口蓋裂があると、ことばの発達にわるい影響を及ぼすため、ことばを話し始める1歳前後に口蓋裂を閉じる手術をおこないます。割れ目のかたちや大きさによって適切な手術法を選択します。
図はファーラー法とよばれる術式であり、三角形の粘膜をたがい違いに縫合します。
□顎裂部骨移植術
唇顎口蓋裂など顎裂(がくれつ)のある患者さんでは、下の図のように歯槽骨が欠損しています。この状態のままでは歯並びをきれいに整えることができないため、顎裂部骨移植術をおこないます。歯が生え変わる時期(6~10歳)に、自家骨(自分の骨)を顎裂へ移植します。手術の前後には歯科矯正をおこない、歯並びをととのえます。
【参照】子どもの病気:唇裂、口蓋裂
日本では、400~500人の出生に1人の割合で口唇口蓋裂の子どもが生まれています。
■分類
上口唇、歯槽、口蓋のどの部分が割れているかによって分類します。
唇裂 | 上口唇が割れている状態です。1カ所で割れている片側唇裂と、2カ所で割れている両側唇裂があります |
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口蓋裂 | 口腔(口の中)と鼻腔(鼻の穴)を仕切る組織を口蓋といいます。口蓋の全部または一部が割れている状態です |
唇顎口蓋裂 | 上口唇、歯槽、口蓋のすべてが割れている疾患です |
■症状
割れ目の形(分類)によって症状は異なります。
外見の症状 | 唇裂や唇顎口蓋裂で起こります。上口唇の変形だけでなく、鼻の変形を伴うことがあります |
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哺乳・食事の症状 | 口蓋裂や唇顎口蓋裂の乳児は、直接授乳やふつうの哺乳瓶でミルクを飲むことが困難です。口蓋裂用の哺乳瓶や総入れ歯のような装置(口蓋床など)を使うことによって、口からミルクを飲むことができます。口蓋裂がある子どもでも、離乳食を食べることはできます |
ことばの症状 | 口蓋裂や唇顎口蓋裂で起こります。適切な治療がおこなわれていないと、鼻に抜けたような声になり、パ行の音などを発音することができません。また、歯並びの異常などによって発音のくせが起こることもあります |
歯並びの症状 | 唇顎口蓋裂など歯槽の割れ目(顎裂)がある場合に起こります。また、手術の影響によって上顎骨(上あご)の発育がわるくなることがあります |
耳の症状 | 口蓋裂や唇顎口蓋裂で起こります。中耳は耳管(じかん)と呼ばれる細い管で、のどの奥までつながっています。口蓋裂があると、耳管の機能が悪くなるため、中耳炎を起こしやすくなります |
■治療のあらまし
見た目、歯並び、ことばなどの症状が起こるため、形成外科、歯科、耳鼻咽喉科、言語聴覚士などの専門科が共同で診療します。
最近では、最初の手術(口唇形成術)の前に口蓋床による治療をおこなうことがあります。口蓋床は哺乳を改善する効果のほかに、歯ぐきや上あごの形を整えて、歯並びを良くする効果もあります。
割れ目のほとんどは2歳までに手術で閉鎖します。その後、小学校に入学するまでの間は、ことばや歯並びが大きく成長するため、定期的な通院をおこないます。なんらかの症状が見つかった場合は、言語訓練、歯科矯正、再手術などをおこないます。
何歳まで治療を続けるかは、割れ目の程度によって変わります。唇顎口蓋裂など割れ目が大きい患者さんは、中学生・高校生ころまで歯科矯正や鼻の変形に対する修正手術をおこなうこともあります。
このように、適切な時期に正しい治療を受けることによって、大きな障害が残ることは少なくなっています。
■代表的な手術
□口唇形成術
くちびるの割れ目を閉じる手術は生後3カ月ころにおこないます。鼻の変形に対する修正を同時におこなうこともあります。
両側唇裂の場合は、1回で両側を閉鎖する方法と、片側ずつ2回に分けて閉鎖する方法があります。
□口蓋形成術
口蓋裂があると、ことばの発達にわるい影響を及ぼすため、ことばを話し始める1歳前後に口蓋裂を閉じる手術をおこないます。割れ目のかたちや大きさによって適切な手術法を選択します。
図はファーラー法とよばれる術式であり、三角形の粘膜をたがい違いに縫合します。
□顎裂部骨移植術
唇顎口蓋裂など顎裂(がくれつ)のある患者さんでは、下の図のように歯槽骨が欠損しています。この状態のままでは歯並びをきれいに整えることができないため、顎裂部骨移植術をおこないます。歯が生え変わる時期(6~10歳)に、自家骨(自分の骨)を顎裂へ移植します。手術の前後には歯科矯正をおこない、歯並びをととのえます。
【参照】子どもの病気:唇裂、口蓋裂
(執筆・監修:埼玉医科大学 教授〔形成外科・美容外科〕 時岡 一幸)
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