細菌性肺炎〔さいきんせいはいえん〕

 細菌性肺炎をもたらす代表的な細菌は、肺炎球菌とインフルエンザ桿(かん)菌(インフルエンザウイルスとは異なっていることに注意)です。

■肺炎球菌肺炎
 市中肺炎の半数が肺炎球菌によって発症するといわれています。たんと尿検査(尿中抗原)が診断に有用です。症状が急激に起こり、高熱が出て肺の広い範囲に炎症が及ぶと、からだの酸素濃度が低下するような呼吸不全といわれる重篤な病状におちいります。白血球数が増加しCRPも高値を示します。
 通常、多くの抗菌薬が有効ですが、徐々に耐性菌も出現しているので注意が必要です。肺炎球菌に対するワクチンがありますので、65歳以上の高齢者や感染を受けやすい糖尿病などの慢性の病気をもっている場合には、予防接種がすすめられます。1回の注射で5年間は有効とされています。


■インフルエンザ桿菌肺炎
 インフルエンザ桿菌はインフルエンザウイルスと異なり細菌に属します。市中肺炎の病原体として肺炎球菌とともに代表的な細菌です。
 高齢者や肺の病気が慢性的にある人に発症する頻度が高いとされています。治療にはペニシリン系抗菌薬を使用しますが、効果がないときにはニューキノロン系抗菌薬を用いることもあります。

■黄色ブドウ球菌肺炎
 インフルエンザウイルスによってもたらされるインフルエンザにかかったあとに黄色ブドウ球菌による肺炎を発症することがあります。
 ペニシリンが効かなくなった黄色ブドウ球菌はMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)と呼ばれ、病院内で感染する代表的な菌です(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症)。抵抗力の弱っている人に感染しやすく、在宅で治療している高齢者などにもみられます。

■連鎖球菌肺炎
 連鎖球菌は口腔(こうくう)内に常在する細菌で、気管支から肺内へ吸引されることにより発症します。気管支肺炎を起こしたり、胸水が貯留したりすることがあります。

■肺炎桿菌(クレブシエラ)肺炎
 飲酒量の多い人や糖尿病のある人に発症しやすいことが知られています。膿(のう)状のたんが出ることが多く、重症化することがあります。膿胸胸膜炎もみられます。

■緑膿菌肺炎
 もともと気管支や肺に病気のある人に、緑膿菌による肺炎がみられます。病院内での感染源の一つと考えられています。

■嫌気性菌肺炎
 高齢者、長期間寝たきりの人、中枢神経障害による嚥下(えんげ)障害のある人、飲酒量の多い人などは気管支に異物(口腔内貯留液や食物の残りかす)が入り、肺にまで到達して肺炎を起こします。悪臭のあるたんが特徴的です。

(執筆・監修:順天堂大学大学院医学研究科 准教授〔呼吸器内科学〕 佐藤 匡)
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