インタビュー

新型肺炎、初期対応に疑問 
SARS同様の大問題

 新型コロナウイルスの国内感染が相次いで報告され、感染経路を追跡しきれない症例や死亡したり、重症化したりするケースも出てきた。政府の専門家会議も異例の緊急記者会見を開き、行事の自粛や風邪の症状が出た場合の自宅療養など、社会や市民の協力を強く呼び掛けるに至っている。

新型肺炎対策に努める百貨店の売り場

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 このような状況を踏まえ、「政府の当初の対応に問題があったのではないか。今回の新型コロナウイルス感染症は、『重症急性呼吸器症候群(SARS)』=用語説明=に匹敵する危機として対応すべきだった」と指摘するともに、現在できる対策を全て実施するよう訴える専門家もいる。

 2019年末に中国・武漢で感染が問題になった新型コロナウイルスによる感染症を、世界保健機関(WHO)は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」と命名。原因ウイルスについては国際ウイルス分類委員会により「SARSーCoV-2」と命名されている。

 ◇SARSの姉妹種

 長年、インフルエンザなどのウイルス感染症の診療に携わってきた神奈川県警友会けいゆう病院(横浜市)感染制御センターの菅谷憲夫センター長は「インフルエンザウイルスにA型とB型があるように、SARSウイルスにも複数のタイプがある。今回流行しているウイルスは02年に世界的に問題になったSARSの姉妹種。症状や病態に違いはあるが、あのSARSと類似した感染症と考えるべきだった」と指摘する。

 菅谷センター長は、今回のCOVID-19とSARSの類似点として、(1)感染力が強い(2)患者の20%が肺炎を引き起こし、3~5%が重篤化する(WHO推計)―を挙げる。一方で、感染直後に重症化するSARSと違い、重症化するまでに1週間程度風邪状の症状が続く。また、軽症のまま自然治癒する患者も多いなどの点が異なる。

 菅谷センター長は「通常の風邪と思って日常生活を続けることで、感染を拡大させてしまう。また、早期の軽症患者を発見しづらく、感染の封じ込めや感染ルートの追跡を難しくしている」と分析している。

菅谷憲夫医師

菅谷憲夫医師

 ◇有効な治療法がない

 その上で菅谷センター長が注目したのが、世界的な医学雑誌に報告された、武漢の41人の入院患者を分析した論文だ。結果的に6人が死亡しているが、患者全員が肺炎を発症し、しかも白血球やリンパ球が減少するなどウイルス性の肺炎の特徴を示していることだ。

 菅谷センター長は「インフルエンザによる肺炎は原則として、免疫力の低下などで起きる2次性の細菌性肺炎で、ウイルス性肺炎はほとんどない。この点が今回の感染症の特徴だ」とした上で、「重症化して発症するウイルス性肺炎はSARSとよく似た症状となり、有効な治療法はなく、酸素投与、点滴などの支持療法で回復を待つしかない」と話す。

 もし重篤化した場合には人工呼吸器を装着し、さらに呼吸機能が低下すると体外式膜型人工肺(ECMO)の導入となる。非常にリスクの高い病気と言える。

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