治療・予防

「パンデミック」新型コロナ
学会が症例、診断遅れで重症化報告も

 新型コロナウイルスによる感染症は、中国や日本、韓国にとどまらずイタリアなどの欧州、イランなど中東、米国などにも拡大し、甚大な影響を与えている。国際保健機関(WHO)は世界的な大流行を意味する「パンデミック」と認定した。中でも、感染経路が追いきれない「市中感染」は発見が遅れ、重症化しやすいと指摘されている。日本感染症学会は所属する全国の感染症の専門医から実際に診療した患者の病態や推移について募集、ホームページ(HP)上で公開している「緊急報告としての症例報告」の中から、市中感染の事例を紹介する。

症例報告に掲載された患者の胸部CT画像=日本感染症学会ホームページより

 ◇「要件満たさず」PCR検査せず

 杏林大学医学部付属病院(東京都)の呼吸器内科、感染症科、麻酔科、心臓血管外科、循環器内科が連名で報告している患者は、首都圏在住の58歳の女性だ。高血圧や糖尿病の持病があったが、海外渡航歴や渡航者らとの濃厚接触などはなかった。

 この患者は2月10日夕から37.8度の発熱やのどの痛みなどの症状が出た。その後、肺炎の兆候があったため、同病院を受診した。受診段階では39度以上の発熱とせきが主な症状で、胸部X線検査やCT検査でも、すりガラス状の影の広がりなど肺炎を疑わせる結果があった。

 ◇呼吸困難が悪化

 病院側はマイコプラズマ肺炎などに加え新型コロナウイルスによる肺炎も疑ったが、当時の厚労省の検査基準を適合しなかったため、遺伝子的に感染の有無を調べるPCR検査は実施しなかった。

 しかし、その後の治療にもかかわらず病状は悪化。呼吸困難が激しくなり、肺炎の悪化による低酸素血症も認められたため、18日に同病院に入院、19日には人工呼吸器による呼吸管理が必要になった。21日のPCR検査で感染が判明したが、呼吸状態はさらに悪くなった。投与した抗HIV薬の効果はなく、急性呼吸不全に対応するため体外式膜型人工肺(ECMO)の使用を開始したという。

感染者は外に空気が漏れない陰圧の病室に隔離が必要=東京都大田区の東京都保健医療公社荏原病院

 ◇集中治療室に移ってから判明

 医療機関を匿名にした形での報告もある。患者は50代の男性だ。高血圧や糖尿病などの持病があったが、肺炎の発病までこれらの疾患の症状は安定していたという。

 患者は1月31日から発熱と倦怠(けんたい)感があって自宅療養していたが、2月3日と4日に地域の医療機関を受診。39度台の発熱と激しいせきがあったがインフルエンザではなく、胸部X線検査で肺炎が疑われ、胸部CT検査により肺炎との診断が確定した。ただ、この段階では患者の状態が良好なため、自宅での治療となった。

 その後も熱が下がらず息切れも強まったため、2月11日に救急外来を受診。低酸素血症があったことから、入院して酸素吸入が始まった。病状は好転せず、集中治療室(ICU)での人工呼吸が必要な重篤な状態に陥った。この段階でさまざまな検査結果から他の原因疾患の可能性が低くなったため、新型コロナウイルスによる肺炎の疑いがあるとして14日にPCR検査を実施して感染を確認。患者は感染症指定医療機関に転院したという。

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