アジソン病(慢性副腎機能低下症)〔あじそんびょう(まんせいふくじんきのうていかしょう)〕

 副腎の組織が破壊されて副腎ホルモンが不足する病気です。約半数は副腎の結核感染、残りの半数は自己免疫により副腎組織が破壊されるために起こります。このためコルチゾール、アルドステロン、副腎アンドロゲンなどの副腎ホルモン分泌が障害されます。
 コルチゾール不足のため倦怠(けんたい)感、脱力感、食欲低下、体重減少、性機能低下などを呈します。コルチゾールが低下すると、フィードバック機構によって血中の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)が増加します。ACTHには皮膚の色素を増加させる作用がありますので、爪、舌、乳輪などで色素沈着がはっきりとし、色黒となります。
 アルドステロンの分泌低下によりナトリウムが失われ、カテコールアミンの分泌低下とあいまって血圧は低下します。アンドロゲンの分泌低下により体毛も減少します。血液検査では血中ナトリウムの低下、カリウムの増加、貧血、白血球の好酸球の増加、血糖低下などを示します。血液中のACTHは増加、コルチゾールやその代謝産物の血中濃度や尿への排出量は低下します。

[診断]
 前述した症状や徴候に加えて血液中のACTHは増加、コルチゾールやその代謝産物の血中濃度や尿への排出量の低下がみられます。健常人にACTHを投与すると血中コルチゾールは増加しますが、アジソン病ではこの反応がないか低下しています。画像診断では結核性の場合の多くに副腎肥大がみられますが、特発性では萎縮しています。

[治療]
 コルチゾールの不足に対してはコルチゾールの適切量を服薬します。健常人のコルチゾール分泌量は1日20mg程度です。アジソン病に対しては副腎機能不全の程度に応じてコルチゾール製剤(ヒドロコルチゾン)を服用します。
 発熱、感染、手術、下痢、抜歯などの各種ストレス時にはコルチゾールに対する需要が増加するので、通常量の数倍を投与する必要があります。増量しないとショック症状を起こすことがあるので注意が必要です。
 ほかの副腎ホルモン不足に対しては通常は治療をおこないませんが、ナトリウムの喪失がいちじるしいときにはアルドステロン作用をもつ合成ホルモン薬(フルドロコルチゾン)を併用することもあります。

(執筆・監修:東京女子医科大学 常務理事/名誉教授 肥塚 直美)
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