時間がたった傷の手当て

 時間がたった傷は、医師に相談したほうがよいと思います。
 人のからだには自分自身で治す力があります。傷はある日数がたつと肉芽(にくげ)ができて傷のすきまを満たし、その上に皮膚が出てきて治ります(傷の治りかた)。このような2次治癒では、順調な治癒経過をとっているときは、肉芽の色が赤くきれいで毎日傷をうめていきます。このような肉芽には傷をきれいにし、ある程度の細菌を殺す作用があり、自分で正しい手当てをしていればよくなります。前述したような、からだの病気や傷自体がわるくなる条件がなければのことです(傷の治療)。
 肉芽や傷からの滲出(しんしゅつ)液が少ないときは、少し厚めに軟膏を塗って、ある程度の湿潤(しつじゅん)性を保つようガーゼを当てます。厚めに軟膏をぬることで、肉芽の保護となり、ガーゼがくっつきにくくなります。ガーゼを取り替えるとき、乱暴に扱うと痛みがあるばかりではなく、肉芽を傷つけ出血することがあるのでていねいにおこないます。傷から出る滲出液が多いとき、軟膏を厚く塗り、ラップなどのシールや傷をおおうガーゼは多くします。
 ガーゼが傷に密着しているときには、ガーゼの上から水を少したらしガーゼを十分に湿らせてから静かにとります。最近は、市販品でも傷にくっつきにくいガーゼや、ガーゼと傷の間に置くメッシュのガーゼ、シールも市販され、それらを使うのも一つの方法です。
 市販されている軟膏には強い薬が入っていることがあり、かえって傷や肉芽にわるい影響を与えることがあります。白色ワセリンなら心配はないと思います。パウダーのような粉はおすすめしません。傷に感染がないかぎり、ある程度、湿らせることがよいとされ、すり傷に軟膏を塗ることは適しています。
 傷が深いときは、肉芽が表面のみをおおって、傷の内部に空間ができその部分にうみがたまることがあります。傷が深い場合は医師を受診したほうがよいです。肉芽は傷の底から徐々に盛り上がり、傷をうめつくすようになることが理想的です。表面がよくなったからといって、治ったと考えるのはよくない場合もあります。
 傷の治りがわるい、治癒までの日数が長くなる、治った傷が醜くなると考えた場合は3次治癒をおこないます。

■傷の治りがおそい場合
 傷の治りがおそいと感じた場合は医師に相談します。糖尿病やむくみのある人、からだの調子のわるい人や高齢者は傷の治りは一般的におそいです。手や足の指先の傷は、傷としては治りがややおそいです。
 そのほか、傷の感染や異物があるとき、壊死(えし)した組織や皮膚が傷に残っているときもおそいです。このようなとき、肉芽の色はきれいな赤色ではなく、黒ずんでいます。傷が治ろうとする勢いが見受けられません。皮膚のがんで起こった傷(潰瘍になった傷)では治りにくく、いったん治っても、またできてひどくなることがあります。
 医師は、原因に対する処置をおこない、場合によっては黒ずんだ肉芽を切りとり、表面をかき出して、傷を新鮮にして新しい肉芽ができるようにし、傷の治りを早くすることもあります。
 いずれにせよ、傷の治りがおそいと感じた場合は医師に相談します。自ら栄養状態をよくし、また糖尿病の人は血糖をコントロールすることも大切です。

(執筆・監修:八戸市立市民病院 事業管理者 今 明秀)